08

大蛇丸様が実験をする傍らで、私はただトマトジュースをすすりながら傍観していた。ここは暁のアジトではなく、大蛇丸様のアジト。四方から伸びた鎖に両手両足を拘束され、切り刻まれている風景を見ても、以前私がその立場にあったとは認識しずらかった。やたら毒に耐性が出来たぐらいしか取り柄のないこの身体は大蛇丸様の役に立っているのだろうか。白蛇の体液すらも、ものともしないと分かった時の大蛇丸様はすごく嬉しそうだったのに、最近は私が話しかけても仏頂面ばかり。サソリさんの猛毒を体内に入れても死ななかった私は凄いと思う。転生の時期が近いのも一因だと思うが、疲労の色が濃く出始めた大蛇丸様が心配でたまらない。

「大蛇丸様」
「どうしたの?」
「名前は役に立っているでしょうか」
「……微妙ね」

クスリと笑った大蛇丸様は私を見ながら意地悪気に言う。酷いや。でも、いつもの大蛇丸様だ。無視されると思ったのに返事を返していただけて嬉しくて大蛇丸様の背中にしがみつく。気分が上がったついでに、大蛇丸様が探しているという巻物の探索にでも行こうと思った。大体の目安はついているようだし、簡単な任務だ。暁を数日間離れることに支障はない。大蛇丸様にそう告げると任せるわ、とだけ返ってきた。

「お部屋の資料、お借りしますね」
「なるべく早く帰ってきなさい」

早く帰ってこいだなんて初めて言われた!その言葉を噛み締めながら、薄暗くなってきた道を走り出す。大蛇丸様の部屋から拝借した資料を頼りに、宿場町へと向かい、夜道を歩きながら考えるのは新しく入ったイタチさんのこと。十中八九、大蛇丸様が次の器にと考えているのはイタチさんだろう。こんな時期に大蛇丸様の前に現れるなんてイタチさんもタイミングが悪い。まだ全然話してもいないし、親しいと呼べる仲でも無いが、イタチさんがいなくなるのは少しだけ寂しいかもしれない。多分、大蛇丸様以外に、初めて優しくしてくれた人だから。


■ ■ ■


資料と照らし合わせて、その男が間違いなくその人物だと確認してから近づいた。大蛇丸様の所を離れて早5日。人混みの中で噎せるような芳香に絶え続けるのは至難の技で。だが、それが好機となったのか、私が話し掛ける前に男から話し掛けてくる。

「お嬢さん。顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」
「えぇ……少し人混みに酔ったみたいで」
「休める所を探しましょう」

夕闇に包まれた町で、目立たないように開店しだす店。所謂、連れ込み宿へとこの男が足を伸ばした時点で思惑は見え見えだった。腰を支える手に力を込めて逃げないように拘束してくるが、私には逃げる意志なんてさらさらない。むしろ好都合だ。俯く私に見えないとでも思っているのか、ニヤニヤと笑みを浮かべて部屋へと連れ込んでくる男に吐き気がした。

「簡単に着いて行っちゃあ危ないよお嬢ちゃん。食われちゃうからね」

ピッチリ閉められた戸。看病のはずなのに乱暴に私を組み敷くこの男の手がどんどんと着物をの中へと侵入してきた。いやらしく身体を撫で出すその手つきを軽蔑の眼差しで見ていたはずなのに、男はにやにやするだけ。服を緩め出した男が放った荷物の中に巻物があるはずだと、一瞬手が緩まる隙をついて巻物に手を伸ばすが、あっけなく組み敷かれた。え?資料では一般人の筈だったのに今のこいつの動きは一般人にはあり得ない早さだった。脳内で警報が鳴りだし、嫌な汗が背を伝わった。

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