02

とても困ったことに今日の私は荒れに荒れていた。大蛇丸様とサソリさんが任務を遂行している間にこの飢えを収めておかなければならない。ちょうど視界に入ってきた、こないだ入ったばかりの角都の相方の首筋をねっとりとした視線で追えば、気味が悪そうに逃げて行ってしまった。どうせ、角都から忠告は受けていたのだろうが彼の身の危険を考えると、私より角都の方が危ない。短気な角都は怒るとすぐに相方を殺すから。いや、相方を殺してしまう分には構わないが、新しく入れる相方はなるべく若くしていただけると有り難い。誰が好き好んで中年の血液を啜りたいものか。若くて瑞々しい、甘い血を想像して喉がゴクリと鳴った。尖った犬歯を舌でくいくいっと押して、自らを慰める。

「行くわよ」
「大蛇丸様、空腹で発狂しそうです」
「今回は山賊のグループを潰すだけだから、私の実験用以外は好きにすればいいわ」
「生身のまま連れ帰るのはアリですか?」
「暁のアジトに持って帰るのは無理ね。なんなら他の人に頼んで取っといてもらいなさい」

いつの間にかサソリさんもすぐそばに居て、私と大蛇丸様の会話を面倒臭そうに聞き流していた。サソリさんは新しく開発した毒を試したくてしょうがないのだろう。毒で始末していただける分にはいいが、前にサソリさんの毒で殺された人物の血液を頂いた所、2、3日意識が朦朧として過ごした記憶が真新しい。今回は注意しなければ、と思ってサソリさんを見ると、サソリさんも同じ出来事を思い出していたのか「自分のモノには印でもつけとけよ」とシニカルに笑って言った。


■ ■ ■


大蛇丸様から投げられた人をズルズルと引きずって戦線を離脱していく。もともと遠距離派だったから二人を見守るように待機していたはずが、気づいたら囲まれていた。え、ちょっと予想外とか思いつつ現状は突破したものの、みんなおっさんで若い奴なんかいなかった。少なくとも私の周りには。死体で転がるおっさんの喉に歯を立てても口内に流れてくるのは苦味ばかりで、とても飲めたもんじゃない。仕方なく重い腰を上げた私に直撃したのが、現在私に引きずられている少年。十歳になっているかいないかぐらいの少年は虚無感を漂わせながら己の運命に絶望していた。

「僕、お名前は?」
「……」
「運が悪かったのさ、諦めな」
「……妹が、」
「ん?」
「妹がどこかに居るはずなんです……」
何気なく話かけた少年に返事なんか期待していなかったが、予想外な返事が返ってきた。死体まみれの地面に視線をさまよわせる様子から、妹を探しているのだと察せられる。私もつられて周りを見回せば、そろそろ終わりそうな様子だった。早くしないと怒られてしまう。

「じゃあ妹さん見つけても命は勘弁してあげるよ」

少年の首を掴み木に押し付けてから、その柔らかい喉に犬歯を突き立てた。肌に歯が食い込む感触の後、プツリと音がして生暖かい血液が流れこんでくる。甘い。初めは抵抗していた少年も、暴れれば暴れるほど首が締まるのを感じて無抵抗になっていた。血色の良かった肌から血の気が引いていき、ついにガクリ、と落ちた。ごちそうさま。少年から手を離して大蛇丸様達の所へ向かう途中で、幼い少女の死体を見つけた。もしかしたら、この子があの少年の妹なのかも知れない。

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