リーダーがここで待つように言ったんだってさ!薄暗いお堂のなかに入ってすぐに見つけた長机に少女の死体を横たえた。まだあたたかいその腕に太い注射針とチューブを繋ぎ持ってきた容器に彼女の血液を入れていく。至極楽しそうにその様子を見つめる私にサソリさんのチクチクとした視線が何かを訴えていた。どうせ下手だとか要領が悪いとか言いたいに違いない。血抜きに関してサソリさんより上手いとは言えないがなかなかスムーズに行っている今なら彼の技術と同等だと胸を張れる。最近、サソリさんは人傀儡を新しく作っていないから血抜きの作業がやりたいのかもしれない。
「サソリさん、血抜きしたかったら若い人間連れてきてください。やらせてあげますから」
「遠慮しとくわ」
コポリと血液が音を発し、彼女の体から血液が採りにくくなった。針を乱暴に抜き取り、鞄のなかにしまう。随分と軽くなった身体を捨てにいくために外にでた時に近づいてくる気配を感じた。リーダーだ。本家のメンバーではないが組織の長の大事な話に途中参加するのは失礼だろう。少女の身体を少年のそばに横たわらせてからなるべく急いでお堂に戻った。
「早かったわね」
お堂の入り口をひょっこり覗くと大蛇丸様、サソリさん、リーダーと見知らぬ人がいた。私に背を向けているこの人は誰だ。後ろ姿だけでは女性なのか男性なのか判断できないうえに、さっきから一言も喋らない。だが結ばれた髪から覗く項に釘付けになっているうちに、その人は私の方を向いた。真っ赤な双眼、つまり写輪眼。ああ、だから大蛇丸様は機嫌が良かったのか。面白くない、そう思いながらも社交辞令として軽く笑っておいた。
「名前、いらっしゃい」
ペットのように手招きされて揚々と大蛇丸様の元へ走っていった。私が犬だったなら、今その尻尾は盛大に振られているに違いない。大蛇丸様の背中から顔を覗かせてそいつを見ると、恐ろしく冷めた表情で私を見ていた。
「新入りのうちはイタチくんよ」
「……そうですか」
どうせ私には関係ないもの。仲良くなんてする必要なんかない、そう思ってイタチさんに見せつけるように大蛇丸様に抱きついた。やれやれと言うように大蛇丸様は溜め息をつくけれど、その手は私の頭を撫でてくれているから気にならない。さっきまで冷めた視線を寄越していたイタチさんは少し興味深そうに見てきていた。そして大蛇丸様はそんなイタチさんをじっと見ていた。
「名前、あなた今日からイタチくんとツーマンセル組みなさい」
「!?」
「彼のパートナーが来るまでの補充よ」
「え……嫌ですよ」
どうしてこうなった。サソリさんに助けを求めようとしても、彼は興味なさげに無視をするし、リーダーに至っては何も言ってくれない。それでも反論しようとする私に大蛇丸様の視線が突き刺さり、しぶしぶ首を縦に振ることになってしまった。