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緊急招集を掛けられたリヴァイ班のメンバーは会議室に集まり、招集を掛けた張本人であるリヴァイの到着を待っていた。リヴァイは会議室に入るなり、話し始める。各々慌ててメモを取り出した。

「名前の協力者に話が聞けた。あいつはマリア銀行に探りを入れているらしい。マリア銀行の方の承諾は取れた。承諾と言っても銀行の承諾ではない。ピクシスのジーさんからのGOサインだ」
「ということは、俺達が張り込みに入るということですね」
「ああ。新しい情報がなければ、今日から貼りこんでももらう」

その言葉にペトラとオルオに視線が集まった。二人は名前がアルバイトとして通っていたバーに聴きこみに行ったはずである。報告を、とエルヴィンに言われ、ペトラとオルオは立ち上がった。その顔には苦渋の表情が浮かんでいる。大した報告はできないのだろうとリヴァイは察しを付けた。やはり、自分で行くべきだった。

「名前のアルバイト先ですが、バーテンダーの話だと彼女は現在休業中だそうです。それと、彼女に関わるなという忠告をされました」
「ほう……」
「刃物を向けられたのですが、警察の名前を聞いて下げました。つまり、外部組織で名前のことを嗅ぎまわっている連中がいるようです」
「……名前と公安の奴らの事件がつながっているなら、その外部組織が名前の命を狙っていると考えられるな」

名前が逃亡中という考えはリヴァイの中で確信になっていた。どちらかというと事件の犯人を追い詰めたいというよりも、名前の身の安全を図りたいという思いのほうが強い。どうか無事でいてくれ、その思いが胸の真ん中を占めていた。

「バーの方は俺がもう一度行ってくる。お前たちはマリア銀行を張ってくれ。名前を見つけるのは難しいだろう。手がかりは外部組織だ。何か怪しい動きをしている奴らがいたら徹底的にマークしろ」
「はい」

リヴァイはエルヴィンを仰ぐ。無言で頷いたエルヴィンに、何も付け加えることがないのだとリヴァイは解釈した。以上だ、と締めくくるとオルオはマリア銀行についての資料を探しに行った。グンタは銀行近くで張り込みに使えそうな建物を探す。彼らはとても有能だ。遅くとも、今日の夕方には張り込みに行けるだろう。

「リヴァイ」
「何だ?エルヴィン」
「お前の手札を暴くつもりはないが、名前という女性の知っている情報を私にも開示してほしい」
「……どうしてだ?」
「いや、知っておきたいだけさ」

リヴァイは逡巡した。エルヴィンのことを信頼している。だが、この事件、先が全く見えないだけあって、リヴァイはなにか踏ん切りが付かない。エルヴィンに情報を渡せば、リヴァイが直接指揮をとるよりも迅速に問題は片付くかもしれない。それでも、名前を売るような、利用させるようなことはされたくなかった。無言のリヴァイに今度はエルヴィンは意思を汲み取った。残念だよ、と笑う。絡みつく笑みから背を向け、リヴァイは再び新宿の街に飛び出した。


■ ■ ■


エレンとミカサはジャンの店に来ていた。来店したエレンを見てジャンは顔を顰め、その後から入店したミカサを見て嬉しいような悲しいような複雑な表情を浮かべる。エレンは店に陳列されているエアガンを見て回りながらカウンターに近づいた。

「ジャン。景気はどうだ?」
「ああ、見てのとおりさ。世間の景気が悪くなれば悪くなるほど儲かる商売なんでな」
「ならさぞかし儲かっているんだろうな。そういえばお前昨日の経済地理出席してなかっただろ。抜き打ちで小テストあったらしいぞ」
「あったらしいってお前もサボってんじゃねーかよ」

額を突き合わせ、互いに睨み合う二人の間にミカサが入って割った。エレン、と名前を呼び、喧嘩を売ったエレンを咎める。エレンはミカサの言葉を組んでそっぽを向いてみせた。

「で、何の用だよ」
「客に向かってその態度はないだろ」
「客かどうかを決めるのは俺だ」

ジャンの言うことは間違っていない。彼が仕入れたものを売るかどうかは彼次第だったからだ。本来ならアルミンとミカサで来るはずだった。だが、アルミンが大学の研究室に呼ばれてしまったためにエレンが来ることになってしまったのだ。エレンの肩を引き、ミカサが前に出る。

「可塑性爆薬が欲しい。できれば、C4を2キログラム」
「爆薬とは珍しいな。商売変えたのか?」
「アルミンが遺跡を掘るって」

ミカサは真顔で冗談としか思えないことを言い出す。リアクションに困ったジャンは「そ、そうか」としか言えなかった。エレンの顔を見て、彼もよくわからないような表情をしていることに気がついた。ミカサなりのジョークなのだろう。

「あまり派手な真似はするなよ」
「ああ、わかってるって」

ジャンはエレンとミカサに待つよう伝え、地下の倉庫に向かった。C4爆薬なら先週マルコが仕入れてきている。あった。二キロの爆薬をジャンは粗雑に梱包していく。どうせ衝撃によって暴発することはない。階段を登り、ミカサに品物を渡す。カルトンに札束が置かれた。ジャンはそれを数える。紙袋を持つエレンは店の防犯カメラに手を振った。

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