15

 
ファーランはサシャの情報を買った男から名前という女性の情報も買おうと接触を試みていた。リヴァイから頼まれた訳ではない。彼が個人的にリヴァイの手助けをしようと思ってやっているのだ。だが、ファーランは男の名前も住所も知らない。新宿でサシャについて聞き込みをしていたところを声かけられたのだ。また街をぶらついて探すしかない。

「イザベル、俺はちょっと街に出てくる。こいつの見張りは頼んだ」
「おう。任せとけ」

イザベルに交番を任せ、ファーランは街をブラブラと歩く。これはサボりではない。見回りだ。時刻は十八時過ぎ。街には学校帰りだと思われる高校生の制服が目立った。ファーランは繁華街の奥へと進み、目を光らせる。私服で来た方が良かったかもしれない。この街奥で警察官の制服は浮いていた。ファーランのスマートフォンが鳴った。

「おう。どうした?」
「遺失物を受け取りに来たいって人がいるんだけどよ。さっき連絡を受けたって」
「あぁ、スマートフォンか」
「そうそう例の青年だ。来たら渡していいか?」
「構わない」
「承知した」

サシャの持っていたスマートフォンはやはりマルコのものだったらしく、彼は無事自分のスマートフォンを手に入れることができることになったらしい。しかし奇妙な縁だ。ファーランは偶然かと首を傾げた。

「おっ、こないだの兄ちゃんじゃないか。今日は制服姿か」

これも偶然かとファーランは首を再度傾げて見せた。目の前のゲームセンターから出てきたのは坊主頭の少年、ファーランが探していた本人だ。コニーはファーランの洋服を上から下までじっくりと見る。

「俺が警察って知っても臆さないとはいい度胸だな」
「俺別に何も悪いことしてねぇし」
「ま、そんなことどうでもいいんだ。少し話さないか?もうすぐ夕飯時だろう。俺が奢る」
「いいぜ、でも、着替えてからにしてくれよな」

あんたその服だと目立ち過ぎちまうとコニーはぼやく。それもそうかとファーランは手帳の紙を破り、そこに電話番号を書いて見せた。コニーはそれを受け取る。

「二十分ほどで戻る。もしも何かあったらここに連絡をくれ」
「わかった」

コニーは大人しく頷き、またゲームセンターの中へと戻っていった。一階の奥のクレーンゲームで遊ぶ女の後ろに立ち、壁に背を預けた。もう少しでとれそうなうさぎのストラップに苦戦する名前をコニーは呆れたような視線を向けた。かれこれ彼女は二十分近くこのゲーム相手に苦戦している。

「誰だったの?」
「こないだ俺から情報を買った男だった」
「へぇ」

名前は大した興味もなさそうに返答した。コニーがサシャを売ったと彼女は気がついているのだろうか。まあ、どうでもいいと思っているのかもしれない。

「そいつに飯誘われたから行ってくる」
「わかった。あ、そうだ」

名前は両替中とかかれたクリップを小銭投入口に差し、コニーの方を向いた。ポケットからスマートフォンを取り出して軽く振って見せた。

「サシャが捕まっちゃったみたい。まあ、あの子がむやみに何か喋るとは思わないけど気が向いたら助けてあげたら?ほら、マルコとかに協力してもらえばすぐどうにかなるでしょ」
「……捕まったって誰にだ?」
「警察よ」

名前の表情は読めない。コニーは黙って頷いた。どうせ機を見て助けるつもりだ。名前の言うとおり、マルコあたりに相談して段取りを決めようと思案するコニーに名前は厚みのある封筒を投げた。

「サシャと落ち着くまでどっかで遊んできたら?」

名前の真意をコニーは汲み取った。だからコニーは名前が嫌いになれない。ありがたく封筒とその中身の札束を受け取り、コニーはファーランと食事に行くため再びゲームセンターを離れた。

「おう待たせたな」
「俺、肉が食いてぇな!」
「奢ってやる奢ってやる」

コニーの上機嫌につられてファーランも機嫌が良くなる。上機嫌に焼肉屋へ掛けこむ二人に名前は目を細めた。

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