02
「話は聞いた」
「あ、クラウド」

奥から出てきた人は、同年代くらいの男の人。勝手にもっと年齢がいった人だと思っていたから、ちょっとだけびっくりした。綺麗なブロンドの髪と、透き通る蒼眼の容姿端麗な人。ティファさんといい、マリンちゃんたちといい、ここの人たちは揃いも揃って美形だなぁ、なんて関心する。

「お邪魔してます、クラウドさん」
「それで、どこから、何を運べばいい?」
「え?えっと、ジュノンから、資材業者さんに発注した孤児院用の備品を運んでもらいたいんです」
「ジュノンか、わかった。受けよう」

ふたつ返事で了承を貰えて、思わずぽかんとしてしまった。こんな簡単な説明で、まさか依頼を受けてもらえるとは思ってもいなかったから。

「あ、ありがとうございます!すごく助かります」
「配達は2日後でいいか?」
「はい、それで構いません。まだ猶予はありましたから。…えっと、料金はおいくらなんでしょうか?」

本来は業者が運ぶはずの荷物を代行で運んでもらうからには、結構な料金がかかるんじゃないかと実は内心ヒヤヒヤしていた。再建中の神羅カンパニーから多少の資金援助は出ていても、孤児院は経営難が続いてるのが現状で。可能な限り出費は抑えたいところだけど、ここはコツコツ貯めた私の貯金を崩さなきゃいけないかなぁ。

「タダでいい」
「っえ?」
「マリンとデンゼルが世話になってるんだろう。それの礼だ」

まさかの思ってもみなかった申し出に目を丸くして、慌てて首を横に振る。

「だめです、お金は払います!」
「いや、必要ない」
「だめですって、お金の切れ目は縁の切れ目なんですから!」

何を言ってるんだろうと自分でも思ったけれど、その言葉にクラウドさんもティファさんも驚いた顔をして固まって、次の瞬間にはティファさんが吹き出した。クラウドさんも眉を下げて少しだけ笑ってる。

「っふふ、マリンたちが楽しそうに孤児院に足を運ぶ理由がわかりました。こんなに素敵な先生なら、確かに通っちゃいますね」
「…え?そ、そうですか?」
「あんたの気持ちだけ受け取っておく。ただ今回は初回サービスだ。また利用してくれればそれでいい」
「えぇ…、じゃあ、はい、お言葉に甘えさせて頂きます」

せっかくのご好意なら、これ以上拒否する方が失礼なのかもしれないと思い直して、ふたりの言葉に甘えさせてもらうことにした。

「また利用してもらいたいなら、まずは電話、出ないとね?」
「…はぁ、わかってるよ」
「よろしい」

言葉を交わすふたりを見て、お似合いのふたりだなぁ、なんて思う。美男美女は会話をしてるだけで目の保養になるんだ、すごい。どういう関係なのかは分からないし、突然そんなことを聞くわけにもいかないけれど、見ているだけで信頼し合っているのがわかって少しだけ羨ましくなる。
って、見蕩れている場合じゃなかった。依頼は受けてもらえたし、院長先生に報告に戻らないと。

「クラウドさん、それじゃあ私は孤児院に戻ります。依頼の件、お手数おかけしますが宜しくお願いします」
「ああ、わかった。直接孤児院に届けるから待っていてくれ」
「はい、わかりました!」
「ナマエさん、今度お食事ご馳走します。ゆっくり遊びに来てくださいね」
「本当ですか?嬉しい!ありがとうございます、ティファさん。それじゃあまた」

ふたりにぺこりと頭を下げて、私はセブンスヘブンを後にした。マリンちゃんとデンゼルくんのご家族、いい人たちだったな。素敵な人たちに出会えた嬉しさと、それからちゃんと依頼を受けてもらえた安心感を抱えてマロンズハウスへと急ぐ。これでなんとか収穫祭にも間に合いそうだし、みんなをがっかりさせずにすみそうで本当によかった。

「……あれ?」

もう少しでマロンズハウスに着くというところで、見覚えのない黒塗りの車がハウス前に停まっているのが目に入った。なんだろう、と思って早足で近付いたら、降りてきたのは見覚えのあるふたり。

「レノさん、ルードさん!」
「よっ、ナマエちゃん」
「ご機嫌よう、ナマエ先生」

赤い髪を後ろで束ねた、エメラルド色の瞳のレノさんと、スキンヘッドにサングラスの強面なルードさん。ふたりは再建中の神羅カンパニーの人たちで、資金援助の関係でたまにこうして孤児院の様子を見に来てくれている。

「今日は車なんですね。知らない車だったから誰かと思っちゃいました」
「新調した途端にさっそく運転したいって、こいつが」
「それはお前だろう、レノ」
「あー?そうだったか?」
「ふふ、今日も仲良しですね、おふたりは」
「やめてくれ、鳥肌が立ったぞ、と」
「同感だ」

相変わらず仲が良いふたりに微笑んで、中へどうぞとふたりを促した。

「院長先生なら、多分奥の部屋だと思います」
「あいよ、行くぞ、ルード」
「ああ」

多分、今日もここの経営状況だとか、援助の方向性だとかの難しい話をしに来たんだと思う。院長先生に収穫祭の備品についての件を伝えるのはまた後でにしようと思って、子供たちが遊んでいる中庭に向かった。
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