03
「お、いいもん作ってんな」

子供たちと木の実と小枝を拾って、それで簡単なリースを作っていたら、レノさんがいつの間にか私の手元を覗き込んでいた。

「っわ、レノさん!?」

すぐ真横にあった顔にびっくりして、作っていたリースが机の上に落ちてしまった。あ、仮止めだったから崩れちゃった。

「やべ…。悪ぃ、そんなに驚かれると思わなかったわ」
「いえ、レノさんのせいじゃないですよ。気にしないで下さい」

眉を下げて困り顔のレノさんに笑って返して、机の下に落ちた木の実を拾う。それをレノさんは手伝ってくれた。

「あー!赤い兄ちゃん、壊したー!」
「ジルくん、お兄ちゃんのせいじゃないよ?」
「…ごめんな、坊主」

レノさんを指さして頬を膨らませるジルくんの頭に、レノさんは優しく手を乗せた。穏やかで優しい表情に、子供たちと接してるレノさんはやっぱり素敵だと思う。なんだかんだで子供たちにも懐かれているし。
神羅を嫌う人はこのエッジにもまだまだいるけれど、レノさんたちはきっと、仕事に真摯に向き合いすぎて非情に見られてしまうだけ。

「あれ、そういえばルードさんは?」
「ルードなら先に帰ったぞ、と」
「レノさんは一緒に帰らなくてよかったんですか?」
「あー、ナマエちゃんが見えたから、つい」
「ふふ、何ですかそれ。あ、でもごめんなさい。私、院長先生のところに行ってきます!」
「おー、んじゃ適当にこいつらと遊んで帰るわ」
「この子たちも喜びます。じゃあまた、レノさん」

ひらひらと手を振ったレノさんに微笑み返して、院長先生がいる部屋へと向かう。きっと備品のこと、院長先生も心配しているだろうから早く伝えてあげないと。
コンコン、と扉をノックしたら中から扉が開いた。失礼します、と小さく挨拶をして、心配そうに私を窺いながら紅茶を入れてくれた院長先生に両腕で大きく丸を作って見せる。

「院長先生、配達の依頼、受けてもらえることになりました!」
「まぁ、本当?良かったわ、ありがとう、ナマエ」
「マリンちゃんたちのおかげです。明後日には直接ここに届けてくれるそうです。収穫祭、予定通りできますね!」
「そうね、みんな喜ぶわ」

ほっと顔を緩ませた院長先生に頷いて、温かい紅茶に口を付けた。

「そういえば、さっきレノさんとルードさんが来ました?」
「ええ、いつもの定期報告よ。ただ、神羅も昔に比べて小さくなったから、いつまで援助がもらえるか…」
「…そう、ですね。でもここが無くなったら、子供たちが…」

孤児院の経営は本当に資金繰りが大変だ。普通の託児所とは違って、身寄りのない子供たちを預かっているから、ご家族からの集金も出来ない。今は神羅からの出資金と、住民の方々からの募金で何とか持っている。ここを無くしたら、子供たちを路頭に迷わせることになってしまうから、なんとしても守らなければいけないけれど。いつの間にか私も院長先生も神妙な面持ちになってしまっていたようで、暗い考えを振り払うように私は立ち上がった。

「大丈夫です、院長先生。いざとなったら、私が直接神羅の社長さんに掛け合います!」
「ふふ、トップになんて、そうそう会えないわよ。でも、そうね。私たちが何とかするしかないわね」
「はい!それじゃあ子供たちのところに戻りますね。紅茶、ご馳走様でした」

微笑む院長先生に頭を下げて部屋を出た私は、さすがにレノさんは帰っちゃったかな、なんて思いつつリースを作っていた部屋へと足を運んでみる。やっぱり中にはレノさんどころか、子供たちの姿もなくてシーンとしていて。でも、ふと机の上にあるものに目がいった。

「…え、これ」

そこには、完成した木の実のリース。形は少しだけ歪つだけど、それでもちゃんとリースになっている。その下に置かれていた紙切れに気付いて、拾い上げて裏返して、思わず笑みが零れた。

『下手くそだけど作ってやったぞ、と。
RENO』

書き殴ったような筆跡と、筆記体のサイン。あの短時間で必死に作ってくれたんだと思ったら、胸がほっこりした。頭を悩ませながら作るレノさんの姿が想像できて顔が綻ぶ。ほんとに優しいなぁ、レノさん。収穫祭が終わったら、これ自分の部屋に持って帰ってもいいかなぁ。

「先生、ニヤニヤしてる〜」
「ほんとだ!ニヤニヤしてる〜!」
「っわぁ!」

いつの間にか後ろに立っていた子供たちに揶揄われて、ちょっとだけ顔が赤くなったのを誤魔化しながら、笑いながら逃げていったその子たちを追いかけた。
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