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「───い、ったぁ…」

全身を強く打ち付けたのか、身体のあちこちが痛むのを堪えて、あたりを見渡す。施設のかなり地下深くなのか、ひんやりとした空気が肌を撫でた。
ここはどこなんだろう。それに、みんなは…。
立ち上がってふらふらと歩いてみて、やっぱり誰も見当たらない。どうやら私はひとり、みんなとは別の場所に落とされてしまったらしい。

「とにかく上に戻る道、探すしかないか…」

ひとり呟いて、施設をしらみつぶしに歩いてみる。と、通路の先に大きな鉄の扉を見つけた。近付いて押したり引いたりしてみるけれど、かなり厳重にロックがかけられているのか、その扉はびくともしない。

「…パスコード?」

ふと扉の横の壁に、ロック解除用のモニターを見つけて触れてみる。解除には6桁の番号が必要らしい。
どこかにヒントでもあれば、と思った矢先に、足元に落ちている紙切れ。拾い上げて見てみると、なんとおあつらえ向きにパスコードがそのまんま書いてあった。あまりの不用心さに流石に苦笑してしまう。とりあえず、それを入力してみて──。

「…よし、開いた!」

ピッという電子音のあとに、ガチャリとロックが開く音。さっそく扉を押し開けて、中に入ってみると、外より更に寒く感じる気温。
そして、薄暗い部屋の中で見つけたものに、背筋に悪寒が走った。

「──これって…」

目の前には、見覚えのある強化ガラス製の大きな研究設備。人ひとりが入れるくらいのそれに、実際に"人のようなモノ"が入れられている。上からはエメラルドグリーンの光が照射されている。

「魔晄漬け……」

まさか、スラムの地下でこんな人体実験をしていたなんて。自分も過去に入れられていたその容器を目の前に、自然と身体が震える。
その人のようなものは、容器の中でぐったりと座り込んでいて、浴びた魔晄は優に許容量を超えているように見える。このままじゃ、この人は異形の怪物に…。
そう思った瞬間だった。壁の向こう側からか、微かに聞こえる人の声と銃声。

「っバレット!?」

音がした壁に駆け寄って、耳を澄ます。聞こえてくるのはバレットの怒声と、ガトリングガンの音だった。この感じは、何かと交戦中なんだと思う。どんどん、と壁を叩いてみるけれど、やっぱり気付いてもらえそうになかった。
ふと、横にあったデスクに目が止まる。紙の束が無造作に置かれているのを、近付いて手に取る。

『サンプル数64体 内57体成功 7体破棄
試験内容:魔晄とジェノバ=レプリカの投与
結果:自我の崩壊が全ての個体で顕著に見られる
完全な成功例は未だ逃走したNo.1のみ
引き続きの観察が必要』

「ジェノバ=レプリカ……」

全てを理解した。そういうことだったんだ。ここの人たちは私と全く同じ実験をさせられて、それでも自我を維持したまま成功した例は未だかつて私だけ。だから、宝条は私を探している…。
くしゃりと手に持った紙が音を立てた時、銃声とともに壁が破壊されて穴が開いた。流石にびっくりして目を見開く。

「え…」
「ナマエ!?」

穴から顔を覗かせたのは、私以外の3人で。とりあえずその穴から這い出て、ふぅ、と一息ついた。

「何でそんなところにいたんだ、ナマエ」
「なんでって…みんなを探してたら」

怪訝な顔をして訊くクラウドに、私も首を傾げて答える。というか、壁の前にいなくてよかった。危なくバレットのガトリングで身体が蜂の巣になるところだった…。

「ここ……なに?」
「人か…?」

穴から今まで私がいた部屋を覗いたティファとバレットが呟く。多分、と付け加えて、神羅の被検体だと思う、と答えた。人を人とも思っていない、非人道的な実験の。

「これが、神羅の裏の顔だ───」
「…クラウド?」

そう言ったクラウドの瞳が揺れて、どこか遠くを見つめるような表情で固まるクラウドにティファが心配そうに声をかける。はっとしたように、クラウドは首を振った。
私が再び穴の中に視線をやった瞬間、奥からまたあの黒い影が大量に現れて目を見開く。

「なんで…っ!」

それはかなりの勢いで穴から飛び出してきて、いつしかエアリスと会った教会の時のように、私たちの身体を津波のように押し流した──。
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