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意識の中で左腕に微かに感じる、不思議な温かさ。心做しか、痛みまで少しずつ癒えている気がする。そういえば、私あれからどうなったんだろう。起きないと、とそっと目を開ける。でも飛び込んできた光景に、まだ夢でも見てるのかと目を丸くした。

「──なん、で?」

血だらけの左腕に2体の黒い影がまとわりついていて、周囲には緑の光が放たれている。先ほど感じた温かさはこれだったんだと納得する。それに、影が光を発して撫でるようにした場所は、痛みが治まっている。まさか、傷を治してくれている…?でも、どうして…。しばらくして、その黒い影はまたどこかに消えてなくなった。呆然と左腕を見る。深い傷が無くなっている。それに、嘘みたいに痛みまで…。残っているのは浅い切り傷だけで、もういつも通り動かせる。影に気を取られて忘れていたが、はっとして辺りを見渡す。

「………ひどい」

辺りは、もう私が知っているスラムじゃなかった。積み重なるプレートと思われるコンクリートの瓦礫。そこには目を覆いたくなるような光景が広がっていた。スラムの人は、アバランチのみんなは…?本当に、これは現実なんだろうか。

「ナマエ!どこ!?」
「ティファ…?」

聞こえてきたティファの声に、よろよろと立ち上がる。瓦礫の向こうからティファとクラウドが走ってくるのが見えた。

「ナマエ、よかった…!」
「無事か?」
「うん、平気…」
「っえ…?その腕、どうしたの?治ってる…?」
「それが────」

私の左腕を見て目を見開いたティファに、私は先ほど自分の身に起きたことを話した。到底信じられない話だっただろうけど、事実傷のほとんどが治っているのだから、ティファもクラウドも信じざるをえなかったらしい。

「バレットは…?」
「向こうから声が聞こえた。とにかく合流するぞ」
「うん…」

バレットを捜すため、クラウドの後を追って瓦礫の中を進む。バレットと合流したら…私は、みんなに謝らないといけない。それに、過去に何があったのかも、もう隠してはおけないだろう。この惨状が私のせいなら、例え見捨てられたって文句は言えない。それどころか、私はみんなにどうやって償っていけばいいんだろう…。
進んだ先で、瓦礫の前に佇むバレットの背中を見つけた。

「マリン……。マリン!ビックス!ウェッジ!ジェシー!!……ちくしょう…!」

何も応えてくれない瓦礫の山に、当たるように拳を叩き付けるバレットに、私は思わず俯いて目を逸らした。ティファの気配が隣からなくなって、バレットの元に行ったんだとわかった。

「ちくしょう……」
「私たちのせいだね」

ティファがバレットに向けて呟いた言葉に、弾かれるように顔を上げる。
違う。悪いのは、私なんだよ。
心の中で叫んでも、それは声にはならなかった。

「ちがう、ちがうぜ、ティファ…。なにもかも神羅の奴らがやったことじゃねぇか」
「……うん」
「この怒りは絶対忘れねぇ。…いいな?」

バレットの言葉は、私の心に重くのしかかった。バレットがティファを抱き寄せるのをただ見つめて、ぐっと拳を握りしめた。

「…痛むのか、腕」

自然と険しい顔になっていたんだと思う。それに気付いたクラウドが私を心配そうに見る。それにふるふると首をふって答えた。

「ううん…腕は、痛くない…」

痛いのは、心だ。こんなにも自分という人間は弱かったんだろうか。押し潰されそうな程の罪悪感と後悔が渦巻いて、いつもどんな風に話していたかすら思い出せない。じっと、魔晄の瞳が私を見据えてから、クラウドはティファたちに向き直った。

「……。バレット、マリンは無事だ。エアリスが言ってた」
「エアリス?…あの捕まってた女か?」
「うん、言ってた。エアリスに頼んだの。マリンを助けてって」
「エアリスの家に行く。マリンがいるなら、おそらくそこだ。…それに、今はナマエを休ませたい」

クラウドがそう言って、私に視線を寄越した。ティファとバレットは頷いて、歩き出そうとした3人に向かって口を開く。
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