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手揉み屋を追い出されるように出た後、俺はサムからなんでも屋の依頼を受けた。片付いた頃にそろそろいいかと店に戻り扉に手をかけたところで、聞き覚えのある煩い声が聞こえて溜息をつく。

「うおおお!クラウドさん、ここでしたか!ティファが、ティファが!俺じゃ、もう……」
「落ち着け、ティファがどうした」
「もうすぐ、コルネオのオーディションが始まるって聞いて、このままだとティファが!でも俺じゃあどうしようもないから…」

こいつの情緒はどうなってるんだ、と思う。呆れながらも、ジョニーの言うとおりならそろそろタイムリミットかと眉を寄せる。

「わかった」
「お供します!」
「必要な…」

言い切る前に走り出したジョニーに、今度は盛大な溜息が漏れた。こいつ本当に話聞かないな…。渋々後を追って、辿り着いたのはコルネオの屋敷。

「じゃあ俺はここで。足でまといになるといけないんで」

元からだろ、という言葉は呑み込んで、ジョニーに向き合う。

「マムの店に戻って、ナマエとエアリスが出てきたら俺が戻るまで待つよう伝えてくれ」
「了解です!」

走り出したジョニーに背を向けて、屋敷の門扉に手をかけ押し開ける。あのレズリーとかいう男がすんなり中に入れてくれるとは思えないが、ナマエたちを巻き込まずに済むならその方がいい。俺を見た途端に眉を寄せたレズリーに近付く。

「お前か」
「推薦状は手に入れた」
「あれは女限定だ」
「ナマエとエアリスが選ばれた」
「ああ…一緒にいた女たちか。気の毒に。……でもな、どっちにしても男は入れない」
「許可は求めていない」

そう来るのはわかっていた。背中の剣に手をかけて、ただそれはレズリーに制止された。

「やめておけ。コルネオさんは恐ろしい人だ。あんたがここで暴れると誰かが責任を取らされる。それはお前が助け出したい人間かもしれないし、あるいはお前の連れかもしれない」
「……」
「わかるか、ここはこういう世界だ。オーディションが始まるまで、まだもう少し時間がある。もし本当に推薦状があるなら、その女たちを連れてこい。俺は……勧めないけどな」

そう言ってレズリーは顔を逸らした。あいつらを巻き込みたくはない。ただ事を荒立てて、もしもナマエたちに危険が及んだら。そう考えると、大人しくレズリーに従う他なさそうだ。溜息を吐き出しながら、屋敷を出る。

「……ん?」

橋の先が妙にざわめいて、人集りができているのに首を傾げる。

「おい!どけって、見世物じゃねぇぞ!散れ散れっ」

ジョニーが通行人を掻き分けるようにこちらに向かってくるのが見える。その後ろには。

「……エアリス?」

ゆっくりとした足取りで俺の前に歩いてきたエアリスに、思わず目を見開く。エアリス…だよな?目を引く深紅のドレスに、深いスリットから脚が見えて、なんとなく目のやり場に困る。素直に、綺麗だと思った。

「お待たせ」
「…あ、あぁ」
「コルネオは、こういうのが好きなんだって」
「…そうか、見違えたな」
「む、どーいう意味?」
「いや、似合ってる」
「意外。クラウド、普通に褒めたりできるんだ」

ニヤニヤと揶揄うように笑うエアリスに居心地の悪さは感じるが、別に思ったことを言ったまでだと開き直る。そういえば、と見当たらないあいつの姿に辺りを見渡す。

「もしかして、ナマエ、探してる?ナマエは…」

エアリスがそう言いかけた瞬間、橋の向こうから一際大きな歓声のようなものがあがった。エアリスの時と同じようにジョニーが人避けに奮闘して、その後ろから大量のフラッシュを浴びながら現れたナマエを見た途端、一瞬時が止まった。
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