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「エアリスは可愛い」
「ありがと、ナマエ」
「あんたら、イチャつくなら店の外でやっとくれ」

マムに一蹴されて、エアリスを見る。え、私とエアリスがイチャついててもダメなの?

「ごめんなさい。でも、服どうしよう?」
「心配しなさんな。あたしがコルネオのハートを射抜く服を見繕ってやるよ。払うもんさえ、払えばね」
「いくらだ」
「ふたりでざっと200万…、と言いたいところだけど、誠意は見せてもらったからね。特別にまけてやるよ。100万だ」
「100万!?」
「ま、あんたらが払えないってことは百も承知さ。だから、提案があるんだよ──」


あの後、マムの提案とやらを聞いた私たちは、地下闘技上のゲート前に来ていた。何でもここで優勝すれば、マムに多額の賞金が入って、それで私たちを着飾ってくれるらしい。エントランスで1人で出場すると言ったクラウドを、エアリスと一緒に丸め込んで3人で出場させてもらうことに。

「準備はいいか?せいぜい死なねぇようにな」
「いつでもどーぞ」

嫌味ったらしく言ったゲートキーパーに向けて一言返すと同時に、目の前の大きなゲートが開いた。

「さて、次はなんと男1人に女2人、ドロドロとした愛憎劇が窺える三角関係カップルの出場だ!」
「なんたる場違い!」
「しかも初参戦!」
「いけすかない!」
「怖いもの知らずの3人組は果たして無事に帰れるのか!クラウド&ナマエ&エアリスの入場です!」
「さっさと負けろー、帰れー帰れー!」

喧嘩打ってんのかな、このMC。とにかく中に足を踏み入れると、会場からは案の定ブーイングやら笑い声が聞こえてくる。まぁ、あんな紹介されたらね…。

「デートのついでかよ!」
「兄ちゃん、女1人寄こせ!」
「姉ちゃん、脱いでくれたら応援するぜー?」

うわ、ゲスいな。さすがウォールマーケット、なんて苦笑しながらダガーを両腰から引き抜く。

「さっさと片付けよー」
「うん、燃えてきた!」

MCの声に続いて、反対のゲートからは1人の人間と、モンスター2匹が入ってくる。観客の歓声が完全にそっち側なのが気に入らないけど、楽しくなってきた。

「ワンちゃん2匹だけでいーの?5秒で終わっちゃうよ?」
「いや、3秒だ」
「1秒、だったりして」
「んだと?てめぇら!」

煽るように発した言葉に、クラウドとエアリスが乗っかってきて更に観客のブーイングが大きくなる。まぁ見ててよ、と意を込めて、観客席にウィンクを飛ばしておく。もっとブーイングが大きくなった気がするけど、それ失礼じゃない?

「さあ、盛り上がって参りました!人が猛獣に、どこまで食い下がれるのか!皆様、まばたき厳禁でお願いします!それでは、1回戦第4試合……レディファイ!」

開戦の合図とともに、クラウドが猛獣使いに重い斬撃を叩き込み、私はモンスター一体の首を背後からダガーで切り裂いた。エアリスがもう一体のモンスターをファイガで焼き払って、事切れたように動かなくなった相手に、会場が静まり返る。

「ほんとに3秒だったね」
「ふふ、有言実行!」
「調子に乗るな、まだ1回戦だ」
「──っこ、この結果を誰が予想したでしょう!まさに大どんでん返し!」
「勝利したのはなんと、クラウド&ナマエ&エアリスチーム!」

MCをきっかけに、ざわめきだす場内。中にはブーイングもまだあるけど、それでも大分反応がマシになってる。あ、これちょっと気持ちいいかも。なんて思いながら一旦控え室まで戻る。
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