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それから準決勝、決勝戦と難なく突破できて、優勝が決まった瞬間に視界の端に入ったマムが満足気に口角をあげた。観客も2回目、3回目と回を重ねる毎に盛り上がってくれたようで、クラウドに関しては女の子のファンがかなり増えたらしい。そしてエアリスももちろん、男性ファンが相当できたみたいで。それなのに一方の私は、脱げだのヤらせろだの、なんでゲスい男ばっかり…。クラウドが睨みをきかせてくれたおかげで大人しくなってたからよかったけど。

「これで、ティファを助けられるね」

控え室に戻ったエアリスは嬉しそうにそう言って、私もそれに頷いた。

「その前にマダム・マムだ。服を用意してもらうんだろ」
「喜んでるところ悪いね」

突然控え室の扉が開いて、入ってきたのはそのマムだった。しかも、何故か纏うオーラが物凄く黒い。多分めちゃくちゃ怒ってる。

「残念だけど、もう一戦やってもらうよ」
「え?」
「どういうこと?」
「あんたらは盛り上げすぎちまったのさ。白熱する試合に、客の賭け金も膨れ上がった。…コルネオが、この機会を逃すはずがないんだよ」
「…つまり?」
「コルネオが推薦する最後の敵を倒して、ようやく優勝になるってわけさ」
「話、ちがう」

思わずそう口に出したエアリスに、血相を変えたのはマムだった。

「それはあたしが言いたいよ!ごうつくばりめ!くそ───!───!────!」
「マ、マムさん…?」

民放もびっくりの耳を塞ぎたくなるような放送禁止用語盛り沢山でコルネオを罵倒するマムに、さすがのクラウドですら顔を背けた。この人はほんとに怒らせちゃいけない人だと冷や汗が流れる。

「…はぁ。でも仕方ないのさ。この街ではコルネオがルールだからね。ただ次勝てば、さすがにコルネオだって渋らないだろう。観客が黙っちゃいないさ」
「次が最後だな?」
「そう願いたいね」
「じゃあ、やるしかないね」

クラウドとエアリスを見て言うと、ふたりも頷いた。それじゃもうひと暴れ、してこようか。背伸びをして、控え室をでて再度ゲートへと向かう。

「俺はあんたらを応援するからな」

そんなゲートキーパーの熱い声援を受けながら、さっそく目の前のゲートが開かれた。

「異例の盛り上がりを見せましたコルネオ杯。どうでしょう、皆様。このまま終わるにはあまりにも惜しいと思いませんか?」
「そこで、ドン・コルネオより皆様へ、ボーナスマッチをプレゼントさせていただきます!」
「もちろん!出場するのは今宵の主役、地下闘技場に突如として舞い降りた新星三角関係カップル!クラウド&ナマエ&エアリスー!」

MCによって会場の熱気は最高潮まで高められ、中に足を踏み入れた途端に物凄い歓声が沸き起こる。

「クラウドぉー!こっち見てぇ!」
「かっこいい〜、かわいい〜!」
「エアリス!結婚してくれー!」
「ナマエ、ヤらせろおお!」
「早く脱げコラー!!」

おかしくない?やっぱり私だけおかしいよね?あまりにもアホな歓声に思いっ切り眉を顰める。ちょっとお仕置きするくらいいいよね。一際大声でゲスいことを叫んでる客が目に付いて、頭頂部に狙いを澄まして、最小限の気力でファイアを唱える。

「おわっ!?あっちちち!!」
「うるさいお兄さんにはぁ、オ・シ・オ・キ」
「ナマエてめぇー!ぶち犯すぞ!!」

作った猫なで声で、上手いこと髪の毛だけがチリチリに焦げた男に向かってウィンクを飛ばす。男は声を荒らげるけど、周りの観客がかなり盛り上がってくれたからまぁよしとするか。

「ナマエ、あまり煽るな…。後が面倒だ」
「はいはーい」

こっちはこっちで眉を顰めたクラウドに一喝されて、大人しく引き下がってダガーを構えた。隣のエアリスは、すごいねナマエ、なんて感心してるけど。

「対しますは、地下闘技場のさらに地下。地中深く封印されしモンスター、いま解き放たれる!」
「我らがドン・コルネオの秘密兵器。ヘルハウスの入場です!!」

その瞬間、ガタンと地面が揺れ、可動式になっていた床が開き始めた。そして大量のスモークと一緒に現れたのは、まさかの一軒家。訳がわからなくてふたりの顔を見る。
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