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「ふふ。とりあえず、代理人の3人のとこ、行ってみよ」
「そだね…」

ジョニーのせいでどっと疲れが溜まった身体にムチを打って、まずはチョコボ屋のサムのところに向かう。サムって、もしかしてさっきの髭?なんて思いながらチョコボ屋の近くまで着くと、ふらふらと歩いてくるジョニーの姿。明らかに構ってオーラが透け透けで、あえてもう構うのはやめた。

「…いいの?あの人」
「いい。どうせ私は過去の女だから」
「あれ、まさかナマエ、気にしてる?」

目を丸くして尋ねてくるエアリスに、冗談だよと笑って、改めてチョコボ屋に向かう。店の前には、髭のおじさんが立ってた。私たちを見て、すぐに呆れた顔をする。

「ん?なんだ、またお前らか。何度来ても同じだぞ、帰れ帰れ」
「違うの。わたしとこのコを、コルネオのオーディションに推薦してほしいの」
「ああ?」
「どうかな?」
「いいぞ」
「え」

まさか、そんなあっさりと二つ返事をされるとは思ってもみなくて、クラウドと私は目を見開く。

「ほんと?」
「ああ。次があったら、姉ちゃんたちを推薦してやるよ」
「…なーんだ、おかしいと思った」
「それじゃ間に合わない…。今回は、ダメ?」
「今回?ははっ、無理無理。ティファちゃんっていう逸材を送り込んでんだ」
「でも、ティファじゃなくて、わたしたちが選ばれるかもしれないでしょ?」
「そんなに推薦が欲しいのか?」
「「欲しい!」」

サムの言葉に、エアリスと声を揃えて応える。だってそれがなきゃ、ここまで来て泣く泣く帰るハメになる。最悪、手下を全部倒して乗り込むって手もあるけど、それじゃティファが身を呈してまで企ててるらしい計画がおジャンになる可能性もある。

「じゃあ、勝負するか?」

そう言ってサムは親指の上に一枚のコインを乗せると、弾いて掌に収めた。なるほど、コイントスってことか。でも、動体視力だけはナメてもらっちゃ困るんだよね。残念ながら見えちゃった、"タネ"が。

「さて、裏か表か…。当たったら姉ちゃんたちを推薦してやるよ」
「…裏だ」
「待ってクラウド。ねぇサムさん、最初っから推薦なんてする気、これっぽっちもないんでしょ?」
「?どういうことだ、ナマエ」
「…姉ちゃん、何が言いたい?」

片眉を上げて、横目で私を見るサムの手を指さす。

「それ。裏も表もないイカサマだってこと」
「…ふっ、やるじゃねぇか。ま、そういうことだ」
「えぇっ、ずるい…!」
「正直言って姉ちゃんたちは可愛いけど、コルネオさんの趣味じゃないと思うぜ。悪く思うなよ。諦めきれねぇなら他を当たりな。じゃあな」

それだけ言うと、サムは後ろ手にひらひらと手を振りながら店の中へ入っていった。横には頬を膨らませたままのエアリス。あ、これ怒ってる。

「ウォールマーケットへようこそ。というわけか」
「初っ端からイカサマおじさんかぁ。他のふたりはまともだといいけど」
「…期待しないほうがいいだろうな」
「むー、ムカついた!クラウド、ナマエ、次行こ次!」

相当今のがお気に召さなかったらしいエアリスが先を歩き出したのを、苦笑しながら私たちも後に続いた。

結局、次に向かった蜜蜂の館では代理人のアニヤンに会うことすら叶わなかった。なんでも3年先まで予約で埋まっていて、どんな要件であれ予約がないことにはどうすることも出来ないと門前払いされてしまったから。
それで、最後の望みは手揉み屋のマダム・マムを残すのみ。後がなくなった私たちは、何が何でもここで推薦状を手に入れないといけない。意を決して、手揉み屋の敷居を跨ぐ。
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