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伍番街スラムの市街地を抜けて、岩肌が剥き出しの細い道を歩く。もちろん、手は繋がれたままだ。ふと少し先の岩壁から、見覚えのある白いものが靡くのが見えて、慌てて手を離す。それと同時にひょっこり顔を出したのは、やっぱりエアリスだった。

「あれ?これは偶然ですなぁ」
「エアリス!?」
「!…どういうつもりだ」

わざとらしく両手を腰に当ててそう言ったエアリスに、私もクラウドもただ目を丸くする。なんで、エアリスがここに。ていうか、見られてない、よね?

「待ち伏せ?」
「…どうして」
「もっと、一緒にいたいから」

ずい、と顔を近づけて放たれた、飾ることなく直球なその言葉に、さすがのクラウドもたじろぐ。こんな綺麗なお姉さんにそんなこと言われたら、たしかにコロッといっちゃうよね、うん。

「エアリス、エルミナさんには?」
「ふふ、秘密」
「えぇ?大丈夫なの、それ」
「……はぁ。道案内を頼む」

こうなったエアリスには、何を言っても無駄だと思ったのか、クラウドは呆れた顔でそう言った。一方の私は、さすがにまずいんじゃ、なんて戸惑うばかりだ。まぁ、エアリスは意外と頑固で決めたことには真っ直ぐ突き進む性格だって、今日1日で私も理解したんだけど。
クラウドの反応に満足したのか、陽気に鼻歌を歌って先を歩き出したエアリスに続こうとして、何故か隣で動かないクラウドに首を傾げる。

「クラウド?」
「…っ、く──」

頭を抑えてふらついたクラウドに、まさかと咄嗟に思う。また、何か見えたの?一体今度は何が、と声をかけようとしたときに、クラウドの頬に一筋の涙が伝った。泣いて、る──?

「クラウド…?」
「どうしたの?」
「……なんでもない」

異変に気付いたエアリスも駆け寄ってきて、心配そうにクラウドに声を掛ける。だが私たちから顔を逸らすようにして、クラウドは何事も無かったように歩き出してしまった。エアリスと顔を見合わせて、ふたりで首を傾げる。ただ本人が大丈夫というなら、これ以上追求するわけにもいかず、数歩先にいるクラウドの背中を追った。

エアリスの案内で、ウォールマーケットを避けて七番街に抜けられる陥没道路を通った私たち。途中ウォールマーケットについて話すエアリスに、やっぱりクラウドは興味ないと言い捨てた。興味があったらそれはそれで引くって言ったら、思いっきり睨まれたけど。モンスターが出たり、頭が弱くて五月蝿いだけの盗賊団に絡まれたりで散々だったけど、ウォールマーケットよりはずっとマシだったはず。

「……」

で、私は何をそんなに冷めた目で見ているかというと。目の前で繰り広げられている、ハイタッチするかしないか劇場だ。一回目は、エアリスが挙げた手の平を見つめてクラウドが怪訝な顔をして終わって、二回目もまったく同じ。そして三回目の今、あまりにも乗らないクラウドに空気を読んだエアリスと、逆に半分くらいまで挙げられたクラウドの手。そして流れる微妙な空気。もう一回目の時から私は傍観を決め込んだ。もはやツッコむ気も起きないよ。なんなのソルジャーってハイタッチっていう概念すらないの?あ、思わずツッコんじゃったよ…。

「クラウド、次は合わせるからね」
「何の話だ」
「ごめん〜」

エアリス、そろそろ怒っていいと思う。些細な喜びを共有できない奴なんて、放っといていいよ。そう思いながら、私はエアリスに向かって両方の手を挙げた。

「はい、エアリス」
「ふふ!はーい」

パン、と小気味いい音が響く。にこにこ笑ったエアリスにつられて私も笑って、ちらりとクラウドを見たら物凄い眉間に皺を寄せてこっちを見てた。お手本、と言ってクラウドをちょっと煽るように笑ってみせると、知るかと不機嫌そうな声で返された。うん、可愛くない。
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