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「ふふ、冗談だよ」
「もー、エアリスその冗談は笑えない…。ザックスは、エアリスのことが大好きだったよ。ううん、きっと今でも大好きなまま」
「…そう、かな」
「妹が保証するんだから、そうなの!」
「──ありがと、ナマエ」

どうして、と思った。どうして、そんなに泣きそうな顔で笑うの。ザックスは…、ザックスは生きてるよね?そう訊こうとして、その言葉は何故か口から出てくれなかった。エアリスの唇が何かを言いかけて、すぐに閉じられる。それにも聞き返すことは、やっぱり出来なかった。

「ね、クラウドのこと、どう思う?」
「え?うーん、無愛想の代名詞みたいな人?」

突然まったく違う話を振られて、内心首を傾げながら思ったことを返す。一瞬目を丸くしたエアリスは、次の瞬間いきなり笑い出して、今度は私が目を丸くする番だった。

「ふ、ふふ、違うよ、ナマエ。クラウドのこと、格好良いって思ってるんでしょ?」
「…ん?う、うん…顔はいいよね、強いし」
「ああいう感じ、好きなんだ?」
「……もしかして、そっちの意味で聞いてる?」

にこにこと楽しそうに笑いながら質問を浴びせてくるエアリスに、だんだんとその意図が読めてきた気がする。

「うん、もちろん。だって、気になるもん」
「……あはは、どうだろ。そういう感情は、ないと思う」

多分、という言葉は呑み込んだ。そりゃ確かに、ここ最近のクラウドが妙に優しくて、私に甘い気がして調子が狂ってるのはあるけど。でも、好きとか、そういうのは分からない。どれが好きってことなんだろう。そもそも好きって何?

「それに、クラウドは別の人が好きなんじゃない?」

例えば、ティファとか。そう考えて、また胸が痛んだ。ほんとにこれ、なんなんだ。

「ふふ、どうかなぁ。でも、自分に嘘、良くないよ」
「…うん?それってどういう…」
「なんでもない。きっと、すぐにわかるよ。お互い、ね」

エアリスが言わんとしている意味がよく分からなくて、首を傾げる。でも、それ以上何か言うでもなくにこにこと笑うエアリスに、なんだかいたたまれなくなってきた。

「あ、クラウド!」

丁度その時、遠くから歩いてきたクラウドを見つけてエアリスが手を振る。こちらに気付いて、クラウドと目が合った。なんとなく私を窺うように近づいてきたクラウドに、おかえりと声を掛けた。

「さっきは、ごめんね」
「…いや、もういいのか」
「うん、この通り!」

元気だよ、と意を込めて笑ってみせた私に、クラウドはどこかほっとした様子で少し笑った。

「なんでも屋の依頼、終わった?」
「ああ」
「お疲れさま。じゃあ、いい時間だし、もどる?」
「ん、そうだね」

日も傾いてきて、いい頃合と言うのもあった私たちは、エアリスの家に向かって歩き出した。
少し進んだところで、先の方に人影が見えた。

「…うわ最悪」

思わず漏れた声。見覚えのあるスキンヘッドと黒いスーツの男が、何故か鳩と戯れている。暇なの?タークスって暇なの?というか、1日に一体何回タークスに会えばいいんだ。その男は私たちの足音に気づいたのか、立ち上がってゆっくりと振り向いた。
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