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「ごきげんよう」
「待ち伏せ?」

特徴的な挨拶に、訝しげな声で答えたのはエアリスだった。

「エアリス、これが新しい友達か」
「新しいって、人聞きが悪い」
「なるほど、魔晄の目だ。それと…"レプリカ"か。レノをやったのはこいつらか?」
「…はぁ。狙いはエアリス?それとも、"レプリカ"?」

わざと嫌味ったらしく自分でそう聞くと、男の眉がぴくりと上がった。

「…答えはどちらも、だ」
「あんたらに渡すつもりはない」
「ふ…お前の意見は聞いていない」

口角を少し上げて答えた男は、傍の鉄格子を開けて空き地へ入っていく。クラウドが後を追おうとして、エアリスがその腕を引いた。

「クラウド、行こ。ルード、悪い人じゃないから」
「そのとおり。だがエアリス、俺たちはなめられたら終わりだ」

ルードと呼ばれた男は、そう言うと武器も持たずただ拳を構えた。まさか、素手でやるつもりなんだろうか、大剣相手に。

「悪く思うな」

次の瞬間、駆け出したルードが、バスターソードを構えたクラウドに強烈な蹴りを繰り出した。蹴りはかなりの重さなのか、クラウドの身体がわずかに圧された。

「思った通りだな。タークスなんて見かけだおしだ」
「…お前もな」

クラウドが発した安い煽りに、同じそれで返したルード。私は溜息をついて、エアリスも落ち着かない様子で睨み合うふたりを見ている。

「エアリス、離れてて」
「…うん」

それだけエアリスに言って、私はダガーを両手にクラウドの隣に立った。

「っナマエ!あんたもエアリスと、」
「観戦は性にあわないの」
「……はぁ」

テコでも引く気がない私にクラウドも諦めたのか、ルードに向き直って剣を構え直した。多分、こいつも強いんだろうなぁ。レノとは戦闘スタイルが違いそうだけど。あっちがスピードとなら、こっちは純粋な力ってところかな。力ではどうしても分が悪いため基本はクラウドに任せて、援護に回らせてもらう。

「それで、お前はそいつの何だ?」
「あんたには関係ない」
「ふ……まるで子供だな」
「言ってろ」

激しい戦闘の中で息も切らさず、普通に会話をするクラウドとルードに、ほんとにバケモノなんじゃないかとすら思う。傍から見ると互角に見えるけど、クラウドの重く鋭い剣さばきは着実にルードにダメージを与えている。少し距離をとっていた私は、クラウドの剣がルードを薙ぎ払ったのを見て、すかさずエアロガをぶち込んだ。

「──く」

小さく呻き声をあげて、ルードは地面に片膝をついた。はぁ、と息をついてダガーをしまう。しぶとかった、こいつ体力オバケなの?

「お願い、今日は帰って」
「…そうもいかない」

エアリスの言葉に、立ち上がったルードが答えて、また拳を握った。と、突然鳴り響く陽気な音楽。眉を少し顰めて、ルードはおもむろにポケットから携帯を取り出し、それを耳に当てた。

『おい、ルード』
「…げ」

めちゃめちゃ漏れ聞こえてきた聞き覚えのある声に、思わず汚い声が出てしまった。脳裏に浮かんだのは、ニヤニヤと底意地悪く笑う赤髪のタークス。

『お楽しみのとこ悪いが、七番街スラムの件で緊急要請だぞ、と。今すぐ戻ってこい』
「え…あ、……はぁ、わかった」
『それと、ナマエには手ェ出してねぇだろうな、と』
「ナマエ?……"レプリカ"のことか。安心しろ」
『んじゃいーわ。それじゃあな、早く戻れよ』

プツ、と切れた電話をポケットに戻してルードは深く溜息を吐いた。途切れ途切れでちゃんと内容は聞こえなかったけど、多分私の話してたよね。電話の向こうでまたニヤニヤ笑ってたかと思うと、うん、イライラしてきた。

「事情が、変わった?」
「そんなところだ。…しばらく家にいてくれ」
「それ、苦手なの」
「お前もだ、"レプリカ"。タークスが迎えに行くまで大人しくしてろ」
「だから、神羅には戻らないって。今日これ言うの3回目!」

呆れた顔でそうルードに返すと、聞いているのかいないのか、ヘリから下りてきた梯子に掴まってそのまま飛び去っていった。
静かになった空き地で、エアリスと顔を見合わせて、お互い苦笑した。
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