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ティファとバレットの声を辿って、階段を駆け上がり線路の上を横切るように繋ぐ通路を走り抜ける。先の階段下には交戦中のティファたちが見えていた。半分ほどを越えた当たりで、ふと何かがおかしい、と違和感を覚える。
なんで。なんで、俺以外の足音が聞こえない──?まさか、そんなバカな。そう思いながらも振り向いて、心臓が嫌な音を立てた。

「っナマエ!!」

呼んだ名前は、虚しく線路内に響いて消えた。あいつが、ナマエがいない。

「クラウド、どうしたの!?」
「何かあったのか!」

階段の下でティファとバレットが叫ぶ。とにかく2人の元に駆け寄った。

「クラウド、無事でよかった!…ナマエは?ナマエはどうしたの?」
「…わからない。さっきまで一緒だった。…でも、」
「あぁ?どういうことだ!?お前に任せたんだ、なんでちゃんと守ってやらねぇ!!」
「っ……すまない」

バレットの言う通りだ。俺がついていながら、いなくなっていたことに気付きもしなかった。ぐっと拳を握り締める。

「クラウド、バレット!言い争ってる場合じゃない!もし、もしナマエが神羅に捕まってたら…。早く探しに行こう!」

ティファの言葉に頷こうとして、辞めた。

「───いや、進もう」
「クラウド、何言ってるの!?」
「そうだぜ!テメェまさか見捨てる気か!?」
「あいつは…ナマエは大丈夫だ。必ず来る」

ナマエは強い。それに俺たちが探しに行ったら、あいつは怒るだろう。

「見捨てるんじゃない。…信じてるんだ」
「クラウド…。うん、わかった」
「しょうがねぇ。今回だけだ、お前とナマエを信用してやる!」

2人のその言葉に頷いて、先に進むため俺たちは足を踏み出した。
信じてる。先ほどするりと自分の口から出た言葉が、今になってすとんと胸に落ちた。本当はなりふり構わずあいつを探しに行って、見つけだして、文句でも言ってやりたい気分だ。もう俺から離れるな、と。
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クラウドたちの痕跡を辿って、やたらと長かった線路を抜けて、入り組んだ発電施設を通って、とうとう合流できないまま魔晄炉に辿り着いてしまった。途中いたるところで壊れた神羅の機械兵器や気絶した神羅兵が転がっていたから、3人が先にここに来ているのは確かだけれど。
それにしても、さすがにあの発電施設のスラムが直下に見える構造はナシだと思った。何度心が折れそうになったか。頑張ったと自分を褒めてあげたい。この作戦が無事に終わったら、ティファの美味しいお酒浴びるほど飲むって決めた。

『整備区画より各班へ通達──侵入者あり。繰り返す──』

魔晄炉に入った瞬間に突然流れた館内放送。整備区画に、侵入者…。なるほどね、クラウドたちは整備区画にいるってことか。急ごう、と進む道を整備区画に変えて駆け出す。
やっぱり魔晄の匂い、嫌いだな──。

整備区画に辿り着いても、あるのは倒れる兵士の姿だけだった。ここまで追い付けないとなると、もしかしてみんな何かに追われてるのだろうかと不安が過ぎる。ふと光るディスプレイが目についてそれを覗き込む。

「兵器…エアバスター…輸送先…ブリッジ…?」

ブリッジに、なんだかよくわからないけど、とにかくやばいやつが送り込まれるってこと?何でそんなことするのかなんて、神羅がやることは一つしかない。侵入者を、アバランチを、始末するためだ。

「待っててね、すぐ追いつくから!」

私はすぐにブリッジに向かって走り出した。
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