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「きゃっ…やば───!」

背後から悲鳴が聞こえて、足元に音を立てて落ちたジェシーの銃。振り向いた時には黒い影がジェシーを突き飛ばして、ジェシーの身体はぐらりと傾いた。

「っジェシー!」

咄嗟に手を伸ばしたけど、それは空を切って、ジェシーはそのまま階段を転がるように落ちていく。

「ジェシー!!」
「ちくしょう!」

ティファとバレットの叫び声に弾かれるように、私はジェシーの元へ駆け出そうとして、黒い影に行く手を阻まれる。

「っなんなの、お願いどいて…!」

斬り付けてもまた別の影が目の前に立ち塞がって、全然ジェシーの所に辿り着けず苛立ちが募る。多分、無我夢中で隙だらけだったんだと思う。横から飛んできた影が私の腕にぶつかり、右手に握ったダガーが弾き飛ばされる。

「おい!ナマエ、無茶するんじゃねぇ!お前まで怪我したらどうする!」
「っでも…!」

咄嗟にバレットが私の右腕を強く掴み、私を制した。それと同時に、それまでひっきりなしに襲い掛かってきていた黒い影は動きをピタリと止め、何故かそのまま揺蕩うように空中へと飛び去っていった。

「なに…?──っジェシー!」

呆然とその様子を見て、はっとする。慌てて階段の下に倒れるジェシーに駆け寄って、抱き起こす。同じようにしてその場にいた全員がジェシーのもとに集まってくる。

「ジェシー…大丈夫?」
「怪我は?」
「えへへ…ドジっちゃった…」

大丈夫、とでもいうように支えていた私の腕を制して、ジェシーが立ち上ろうとする。ただそれは足に走った痛みで叶わなかったようで、今度はティファがジェシーを制した。

「無理しないで!」
「…人、集まってきた」

周りを見て、思わず呟く。何事かとざわめいた住民が、どんどんセブンスヘブンに集まり始めている。浴びせられる好奇の視線にふと過ぎる考え。まさか今の光景、ほかの人には見えてなかったの?

「見世物じゃねぇぞ!!」

それを一喝したバレットの怒声に、周囲は慌てたように散り散りになって、ほっとした。

「ったく、なんだったんだ?あのウジャウジャはよ」
「…何がしたかったんだろ、いきなり消えた、よね」

吐き捨てるようにぶつぶつ文句を垂れるバレットに、私も今まで見たことのない異形の魔物を思い返して呟く。何か、目的があって襲ったとしか思えなかった。やけにあっさりと引いていったところも、何かが引っ掛かる。

「……大丈夫か」
「平気って、言いたいところだけど──」

苦笑して答えるジェシーを、クラウドは何も言わず抱きかかえた。そのままセブンスヘブンの中へと入っていくクラウドに、残された私達も頷いてそれに続いた。
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