30
また、夢を見た。
真っ暗な闇の中に見える一筋の光。その光を背にして、あの明るい笑顔で立つザックス。その口は動いているのに、声は聞こえない。くるりと背を向けて、光に向かって歩き出すザックスに、私は右手を伸ばす。必死で走って、ザックスの名前を叫ぶのに、届かない手、振り向かない背中。どうして、行かないで。声が枯れるほど叫んで、やっとザックスが振り向きかけて───。

「ナマエ!いる!?」

切羽詰まった声と、どんどんと強く叩かれる扉の音で、私の意識は急激に覚醒する。この声、ティファ?いつもと違うそれに、慌ててベッドから起き上がって扉を開けた。

「ティファ?どうし──…なに、これ?」

扉を開けた先には息を切らせてかなり緊迫した様子のティファと、その後ろを飛び回る無数の黒い影。訳がわからない光景に、思わず言葉を失う。

「ナマエ、お願い、手伝って!セブンスヘブンでバレットとジェシーが戦ってる、でもいつまで保つかわからないの!」
「う、うん。わかった、とりあえず行く!」
「ありがとう!私もクラウドを呼んでから行くから、それまでお願い!」

ティファの言葉に頷いて、急いでダガーを掴んで家を飛び出る。街全体が、黒い影に覆われて、まるで昨日までとは違っている。何が起きてるの、一体。影をかき分けながら、とにかくセブンスヘブンを目指して走る。やっとのことで着いたセブンスヘブンの前では、バレットとジェシーが銃で応戦する様子が目に飛び込んできて、私もそこに駆け寄る。

「バレット!ジェシー!」
「っナマエか!悪ぃな、ちっと手ェ貸してくれ!」
「そのために来たの、任せて!……これ、なに?何があったの?」

ガトリングガンを黒い影に向かって乱射するバレットの横で、私も影をダガーで切り裂きながら状況を聞く。影といっても実体はあるようで、斬り裂いたところから影は霧散して消えていく。ただ、数が多過ぎる。

「わかんねぇ!くそっ、どうなってやがる!」
「外に出たらこの有様!っく、ほんと訳がわかんない!」

斬っても斬っても次々と湧いて出てくる影に、少しずつ体力が奪われる。魔法で一掃しようにも、こうも縦横無尽に飛び回られちゃ上手くいくようには思えない。さすがに、ちょっと堪えてきた…なんて溜息を漏らした時に聞こえたふたつの足音。

「ジェシー!バレット!」
「遅ぇぞ!」
「ナマエ、大丈夫か!」
「うん、なんとか」

私がしたように、影を掻き分けて駆け込んできたのはティファとクラウドだった。良かった、2人が来てくれたならまだ何とかなりそうだ。

「ひっきりなしに来る!もう、限界!」
「今行く!」

確かにジェシーの言う通りだった。もう何体倒したと思ってるの。本当にどこから湧いてくるの、こいつら。振り回しっぱなしで疲れた腕に鞭を打ちながら、内心悪態をつく。とにかくティファとクラウドに加勢するため、階段から広場へ降りようとした瞬間だった。
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