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店内でジェシーを椅子に座らせた後、私達の間には変な沈黙が流れていた。誰も、何も話さずに、それぞれが何かを考えているような。それは例に漏れず私も同じで、これからのことを考えていた。あの黒い影は、何か大切なものと繋がっている気がしてならない。それが何かはわからないけれど、言ってしまえば核心に迫る鍵にも思えて。
そんなことをぐるぐると考えていると、地下から上がってきたウェッジがジェシーを見るなり慌てたように駆け寄ってきた。

「ジェシー!どうしたんスか、その足!大丈夫っスか!?」
「ふ、騒ぎすぎ!全然ヘーキ」
「でも、しばらくは安静にしたほうが…」
「ダメ!──っい、…!」

ティファの言葉を遮るように、ジェシーが即答して椅子から立ち上がったけれど、その直後痛みに顔を歪めた。やっぱり、平気だと口で言ってはいても、実際かなり痛みが強いみたいだ。

「無理すんな!ジェシーは、留守番だ」
「っ!作戦はどうするの!?ビックスはもう潜入しちゃってる、今更中止にはできないでしょ!?」
「…あー、オレががんばりゃいいだろ!」
「余計心配!」

それは同感、と心の中で思う。バレットは強い、けれどその大きすぎる正義感で突っ走りすぎるところもある。ジェシーが言ってるのは、多分そういうことだ。バレットも自分なりに思うところがあったのか、バツが悪そうに頭を掻いて、少し離れたところで傍観していたクラウドに近付いた。

「……お前、今から出られるよな?」
「報酬は、割増だ」
「…おう、任せとけ!よーし、クラウドを入れて作戦再開だ!」
「私のぶんまで、かきまわして」

ジェシーの言葉に頷いたクラウドが、おもむろに私へと視線を寄越した。それに苦笑する。言いたいことはわかってるよ、と心の中でクラウドに答える。行かないのか、ってクラウドの顔にモロに書いてる。

「ウェッジ、お前はジェシーとマリンを頼む。それとナマエ、巻き込んで悪かったな」
「オレは元気っスよ!?」
「ふたりを任せられるのはお前だけだ」
「…はいっス」

ウェッジが親指をぐっと立てる。大丈夫だよ、ウェッジなら。そう伝わるように、ウェッジの肩に手を置く。魔晄炉は神羅の施設だけど、そこに私が求める情報がある可能性は低い。でも、昨日見たスラムの夜景に、思っちゃったしなぁ。守らないとって。

「ねぇ、バレット」
「どうした」
「その作戦、私もついていく。…いいよね?」
「あぁ?…そりゃお前が来てくれりゃ戦力として大助かりだけどよ──って、ダメだダメだ!これは俺ら身内でやり遂げなきゃなんねぇんだ!」
「確かに私はアバランチじゃないけど。みんなのこと家族みたいに思ってるよ。家族を守りたいから、じゃダメ?」
「ナマエ…。家族か、うん、そうだね。私からもお願い、バレット」
「……ったく、ティファまでよぉ。しょうがねぇ!よし、仕切り直しだ!ターゲットは伍番魔晄炉!各自準備を整えて駅に集合!」

どこか照れを隠すみたいに大声を出したバレットに笑って、ジェシーとウェッジに見送られながら、私達はセブンスヘブンを後にした。
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