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「おつかれ〜!こっちこっち!」
「ジェシー!無事みたいだね」

空き地には既にジェシーの姿があって、一旦物陰に隠れるようにして集まる。お目当ての火薬は無事手に入れられたみたいだ。

「ちょっと派手にやりすぎじゃない?ま、おかけでこっちも無事──、あれ、ウェッジは?」

ジェシー以外で顔を見合わせていたら、通りを輸送車が結構なスピードで走り抜けていって、ウェッジが放り出された。

「ウェッジ!あっ……ぶない!」
「俺たちが行く」

続け様にウェッジのすれすれを走り抜けていく車。ジェシーが慌てて駆け寄ろうとして、それを制したクラウドとビックスがウェッジの元に駆け寄った。支えられて戻ってきたウェッジに、私も声をかける。見た感じ大きな怪我は、なさそうだけど。

「大丈夫?ウェッジ」
「めんぼくないっス…」
「撃たれたのか?」
「多分、流れ弾っス…うぅ、」

どこか痛がる様子のウェッジに、ビックスも心配そうに声を掛ける。ウェッジが抑えてるのは、お尻。え、グロいのはやだな、なんて思いつつ恐る恐る覗き込んで、思わず苦笑した。

「あはは。ウェッジ、それかるーい火傷」

服がちょっと破れて、焼け焦げてるだけ。なんだか心配して損した気分だ。

「あぁ?なんだよ!大袈裟なヤツだな」
「…腹ペコっス」
「ふっ」

漏れ聞こえた笑いに、その場にいた全員が目を丸くしてクラウドを見た。あ…笑った。あの表情筋死んでるのかと思うくらいいつも仏頂面のクラウドが、普通に。

「あ、いい顔!…ふぅーん?」

ジェシーの面白がる声に、当のクラウドはバツが悪そうにいつもの顔に戻って目を逸らした。なるほど、無意識だったんだ。でもクラウドの素の顔を見れたような気がして、私も嬉しくなる。いつもそうしてたらいいのに、勿体ない。

「…行くぞ、帰るんだろ?」
「ふふ。うん、帰ろ帰ろ」
「「「もちろん!」」」

思ってることは、多分みんな一緒だった。少しずつ距離が縮まって、嬉しいような、擽ったいような。先を歩き出したクラウドに、顔を見合わせて、みんなでその背中を追った。

そして今、私は冗談抜きで、泣きたい。
いや、これは泣いてもいいよね。

「ナマエ〜?いつまでそうしてるの?」
「……えへへ」

プレートの境界面で、みんなから少し離れた位置で乾いた笑い。ジェシーの目の前には、置かれた3つのパラシュート。それでスラムまで降りるんだ、って心底楽しそうに話したジェシーに、私は大袈裟に目を逸らした。この世で唯一苦手なのは、高いところ。ただ高いだけなら別にそうでもない。でも、足元が見える感じだけは、どう頑張っても無理。無理無理無理。

「…なんとかして帰るから、みんなは先に…だめ?」
「だーめ」
「オレだって怖いんスからね!ナマエさんだけ逃げるなんて許されないっス!」
「……はい」

ブーイングを受けて、覚悟を決めるしかないんだと一歩ずつそろそろと進む。もう既に足元の金網から透けてスラムの明かりが見えて、足が竦む。

「……や、やっぱり無理!」
「はぁ…、あんたを待ってたら夜が明ける」
「えっ、ま…!?」

突然近付いてきたクラウドが、ぐい、と私の腕を引いて、テンパる私を余所に手際よくベルトを締め始める。まってまって、まだ心の準備が、なんて混乱してる間にクラウドがいつの間にか全部のベルト装着を終えて私の後ろに立った。で、風が吹き抜ける鉄骨の上に無理矢理、ほんとに無理矢理立たされた。
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