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さすがにこの時間だと、駅は人通りがなく辺りも静まり返っている。少し歩いたところで見えてきた人影はふたつで、それはクラウドとジェシーだった。私を見つけて、ぶんぶんと大きくジェシーが手を振る。
「ナマエ〜!来てくれたんだ、ありがと」
「ううん、どうせ暇だったからへーき」
「クラウドから内容は聞いた?」
「えっ?あー、聞いてない…かも」
「ちょっとぉ!クラウド、ナマエにもちゃんと伝えといてって言ったでしょ?」
「どうせ道中で詳しく話すつもりだったんだろ」
「そりゃそうだけどさぁ」
なんだか、クラウドの顔を直視できない。さっきのことがあって気まずい。切り替えたつもりでも、いざ本人を目の前にするとだめだ。そもそもの原因のクラウドが、涼しい顔してるのも気に入らない。
「鉄道、今夜はもうないぞ」
突然聞こえてきた声に振り向くと、そこにはビックスと、さらにはウェッジの姿。
「ヤツら終電を早めたんだ」
「相変わらず勝手っスよねー」
「という訳で、こいつ借りてきたからこれで上行こうぜ?」
そう言ってビックスが指をさした先には、3台のバイク。うわ、乗り心地悪そー。ん?いま、上に行くって言った?
ジェシーとしては2人がここにいることが不思議だったみたいで、あれこれ3人で話しているのを一歩離れたところから眺める。アバランチの絆、特にこの3人の絆って特別なものなんだと改めて思わされる。
結局のところ、プレートの上でやりたいことがジェシーにはあるらしく、簡単に言えばこの依頼はその護衛のようなものだった。話は纏まったのか、上まではクラウドとビックス、ウェッジがそれぞれ1台ずつ運転をすることで決まった。
「んじゃジェシー、俺の後ろに乗ってくれ。ナマエはクラウドの後ろに…って、おい、ナマエ?」
ビックスが何か言ってた途中だったけど、それを右から左へさらっと聞き流して、迷わずビックスの後ろに乗ってお腹に手を回す。別に気まずさからなんかじゃなく、何かあった時の戦力的にこれが丁度いいと思ったから。全くないかと言えば…、それは嘘かもしれないけど。
「ん?なに?」
「あー、っと。まぁいいか」
「やった、それじゃわたしはクラウドの後ろゲット〜!」
嬉しそうにクラウドの後ろに飛び乗ったジェシーに、ビックスと顔を見合わせて苦笑する。ジェシーの掛け声をきっかけに、3台のバイクは真夜中の静寂の中、走り出した。