19
コトン、と眺めていた写真立てをベッドサイドテーブルに置く。写真の中には、これでもかというほど無邪気に笑う幼い私と、にっと歯を出して笑うザックス。
「可愛い妹分と彼女さんを置いて、ほんとにどこに行っちゃったんだか…」
ポツリと呟いた言葉は、ひとりきりの部屋に吸い込まれて消えた。
ずっと、真実から逃げ続けてここまで来た。
目を背けて、考えないようにして、何でもないと笑って。
「…夢を抱き締めろ、そして、どんな時でもソルジャーの誇りは手放すな、か…」
耳にタコができるまで聞かされた言葉。いつもそれを言うザックスは、悔しいくらいに格好良かった。希望に満ち溢れた、そんな顔。
「ふふ、私、ソルジャーじゃないんだけど」
じわりと涙が浮かぶのを、乱暴に腕で拭って、ひとり笑う。うん、もう決めたよ、ザックス。あなたが救ってくれた命を、何もせずに浪費するのは終わりにする。
例え、どんな真実が待ち受けていたとしても。例え、あなたがもうこの世にはいなかったとしても。私が、ちゃんとザックスを見つけてあげる。
「…うん、よし!」
まずは、神羅カンパニーを調べることからかな。それなら、アバランチに同行させて貰うのが手っ取り早い。そうと決まれば、セブンスヘブンでバレットに交渉を、とベッドから腰を上げた時、コンコンと扉がノックされた。
「はーい?」
普段私の家を訪ねてくるような人はいないから、誰だろうと首を傾げながら、とりあえず扉を開ける。
「…え。クラウド?」
「頼みたいことがある。それと…あんたの様子が、おかしかった気がした」
目の前にいたのは、存外真剣な表情のクラウド。さらには様子がおかしかった、とよくわからないことを言い出したかと思うと、どこか気まずそうに視線を私から外す。まさか、それを心配して来てくれたんだろうか。この、他人に全く興味なさそうなクラウドが?
「…それは気のせいだと思う、けど。とりあえず、入る?」
「っは?…いや、いい」
「良くない。目立ってるから、入って」
中へ促した途端、目を見開いて何故かたじろぐクラウドの手を引いて、無理矢理入ってもらう。だって、通りすがりの人達が好奇の目で見てたんだもん。さすがにこっちが気まずいんですけど。