18
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裏路地での一件の後、俺はひとりセブンスヘブンの扉を開けた。あいつ、ナマエは予定があると言い残し途中で別れた。

「おかえり、クラウド」
「…ああ」
「あれ、ひとり?ナマエは?」
「さあな、予定があると言っていた」
「そうなんだ、何だろうね」
「興味ない」
「…喧嘩でも、した?」

ティファの言葉に自分の眉間に皺が寄るのがわかる。別に、そういうんじゃない。そう答えようとして口を開きかけたところで、この数日ですっかり聞き慣れた声が聞こえた。

「おい、下に全員集合だ」

バレットが地下から上がってきて、そう告げた途端にバタバタと忙しなくなった店内。ティファも例に漏れず、どこか暗い顔を一瞬したような気がしたが、バレットに従った。

お詫びと称してティファが作ったカクテルが注がれたロックグロスを片手に、静かになった店内でひとり酒を煽る。吐き出された溜息とともに、考えるのはあいつのこと。

『だから、…知りたいよ』

そう言って、ナマエは笑った。傾いた西陽が照らすその顔が、何故だか頭から離れない。どこか泣きそうな顔に、胸が締め付けられた。
こんな色だったな、とふとグラスの中の液体を見て思う。色素の薄い珊瑚色の瞳。珍しい瞳の色だ、と会った当初から不思議に思った記憶がある。陶器のように白い肌と、細い絹糸のような灰白色の髪、無駄に整った顔に華奢な身体。それに似合わない並大抵ではない戦闘の腕と、いちいち鼻につく挑発的な態度。かと思えば唐突に妙に素直なことを言ったりもする。
ふ、と自然と口角が上がるのを感じて、訳がわからないと無理矢理酒を流し込んだ。酒でも回ったのか、らしくない思考に自嘲する。
もし──。もし、俺もだ、とあの時反射的に思ったことを素直に言っていたら、あんたは何て言ったんだろうか。
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