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「じゃあ、どんどん行こっか」
「…ああ」
「まずは、アイテム屋さんから。……ねぇ、クラウド、顔怖いよ」
「…」

ふと横に立つクラウドを見上げると、そこにあったのはびっくりするほどの仏頂面。そもそも愛想よくできるとは全く思ってなかったけど、せめて普通の顔くらいしてて欲しい。

「クラウド、手貸して?」
「?なんで」
「いいから、はい!」
「……はぁ」

相変わらず溜息多いな、なんて苦笑しながら、渋々差し出された手をとる。

「っ!?お、い…なにを」

突然手を握られたからか、びく、とクラウドの身体を強ばるのがわかる。あーあ、本当に耐性なさすぎ。とりあえずそれは無視して、その手を私の両手で包み込んで暫くそのままぎゅっと握る。

「…はい、開いてみて」
「は?…マ、テリア?」

クラウドが怪訝な顔で手のひらを開いて、目を見開く。

「ふふ、びっくりした?昨日のお礼。あげる」

昔、私は泣き虫で、それでよくザックスを困らせてたことを思い出す。そんな時彼は決まって、おまじないだ、と言って同じことをしてくれた。開いた手のひらに乗っているのはいつも違うもので。その度に涙は止まって、魔法使いみたいだっていつも喜んでた気がする。

「怖い顔してたから。もっと、笑ったりしたらいいのに」
「…はぁ。余計なお世話だ」
「あはは。お節介って、よく言われる。それじゃ、行こ」

呆れたような表情は相変わらずだけど、さっきの仏頂面よりはずっとマシになったと思う。いつかクラウドが心から笑った顔が見てみたいな、なんて思って、想像もできなくて内心苦笑した。

「こんにちはー。JSフィルターの交換に来ました」
「いらっしゃい。ん?あれ、ナマエちゃん。今日はティファちゃんじゃないんだ」
「うん、ごめんね、今日はティファの代わりなんだ」
「いやいや、ナマエちゃんも大歓迎さ。…んで、そいつは?」
「あ、この人は集金係のクラウド。フィルターのお代は彼にお願いしまーす」
「…あんた、上手いことやったな。その役目、俺と代わってくれよ」
「あんたには無理だ」
「あぁ?」
「ちょ、クラウド!あはは、じゃあまた寄らせてもらうね。ティファにも会いに来て」
「わかったよ。ナマエちゃん、今度1杯付き合ってくれよ?」
「もちろん、是非!」

変な空気になりかけたところで、慌ててクラウドを連れてアイテム屋から出る。振り返ってクラウドの顔を覗くと、また仏頂面に戻っていて苦笑する。
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