09
「はぁ、ちょっと痣になってる。最悪」

昨日のように夢を見ることはなかったものの、今日の目覚めもいいものとは言えなかった。寝返りを打った際に、壁にぶつけた肘。しかも最悪なことに、昨日ぶつけた患部と全く一緒のところを、更に痛め付ける結果となった。それもこれも、クラウドのせいだと勝手に全責任を押し付ける。いや、半分は自分のせいなんだけど。

「おはようございまーす」

昨日と同様に、セブンスヘブンの扉を開けて中に挨拶をする。

「あ、おはよ!ナマエ」

今日もまたティファだけなのか、と思った途端に目に入る金色。昨日と全く同じ席に座ったクラウドは、ちらりとこちらを一瞥して、すぐにそれは逸らされた。え、また無視ですか?私とは挨拶すらしたくないと?

「クラウド、おはよう。昨日はありがとう。ねぇ、これ見て??」

負けじと私も同じ席、クラウドの右隣に座って笑顔で話しかける。ぶつけて青アザになっている左肘を指さすオプション付きで。

「寝惚けてぶつけでもしたのか」
「−っい゙!」

あろうことか、クラウドは丁度青アザになっている肘を容赦なく掴んだ。そんなイジメみたいなこと、普通する?しかも昨日会ったばっかだよね、私達?思いの外強い鈍痛に流石に涙が浮かぶ。

「クラウド、そこらへんにしてあげて?」
「ねぇ、なんで?私なにかした?」
「しただろ。突然斬りかかってきたのはどこのどいつだ」
「え?ナマエ、どういうこと?」
「っあ、あー…あはは、」

せっかくティファが助け舟を出してくれたのに、クラウドが余計なことを言ったせいで全部水の泡。まだ根に持ってたなんて、心狭いなクラウド。それにあれはあくまでフリだったんだから、と口に出さずに反論する。

「ふふ。2人とも、いつの間にそんなに仲良くなったの?」
「…これのどこが仲良くみえるんだ」
「同感。でも、クラウドは腕が立つのは確か。だから安心してティファを任せられるよ」
「ふふ、なにそれ」
「はぁ?無駄に上から目線だな」

思ったことを正直に言っただけなのに、しかも褒めてるのにクラウドは不満げに私を睨む。

「でもそれだけ打ち解けたなら安心。ってことで、今日も引き続きクラウドのことお願いね?」
「…ん?話が見えないんだけど…」
「どういうことだ」

手を合わせてにっこり笑ったティファ。この笑顔を見ると、ティファがスラムで人気がある理由もわかるなといつも思う。ただ、話の内容は分からないけれど。

「クラウド、昨日の続き。JSフィルターの交換に行ってもらいたいんだ。ジェシーが作った汎用毒性物質除去フィルター。ナマエも愛用、ね?」
「うん、効き目ばっちりのあれでしょ?」
「そう、評判も良くて、この店よりずっとお金になるんだよね」
「……そういうことね」

なんとなく流れはわかった。多分、昨日の作戦に同行してもらった報酬を、それで賄いたいということなんだろう。あー、とか、はぁ、とかずっと言ってるクラウドを横目に見る。

「ね、訊いてる?」
「…勘弁してくれ。揉め事がないなら、俺の出番はない」
「ティファ、話はわかったけど、それ私じゃない方がいいんじゃない?」
「ううん、ナマエが適任なの。ナマエが行ってくれると喜ぶ人いっぱいだから。それに、私は仕込みが立て込んでて」
「…うーん、わかった。クラウド、待っててもお金、舞い込んでこなさそうだよ?」
「…はぁ。さっさと片付けるか」
「お願いね。回収したお金、そのまま受け取ってもらっていいから」

クラウドは相当こういう類の仕事は苦手なのか、椅子から立ち上がる挙動もいつもよりゆっくりだ。私も正直気乗りはしないし、ティファはああ言ってたけど、やっぱりティファに来てもらいたいと思っている人が大勢いるだろうし。とりあえずいつもお世話になっている手前、断るわけには行かないから私も思い腰をあげた。

「ナマエ、ついでにスラムの案内もお願い」
「はぁい」

店を出る手前で追加された注文に苦笑しながら、ティファに手を振って私とクラウドは店を後にした。
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