08
「ちょ、クラウド!」
「なんだ」
「なんだ、じゃなくて。家すぐ近くだし、大丈夫だから、ね?」
「……」

いや、無視!?チラ、と私を見たかと思ったら、またなにも言わずに歩き出すクラウド。止まる気配のないクラウドに、この構図意味が分からないと頭の中がハテナでいっぱいになりながら、諦めて大人しく送られることにした。

「頑固って、言われない?」
「別に」
「もしかして、心配してくれてる?」
「…は?」
「何でもない」

心配じゃなかったら何なんだとは思いつつ、面倒だから追求するのはもうやめた。でも何だかんだ、この人の傍は居心地が悪くないと思っている私もいる。

「ね、クラウド」
「なんだ」
「クラウドは───。やっぱり、何でもない」
「…はぁ。何なんだ、さっきから」

クラウドは、ザックスを知ってる?そう訊こうとして、辞めた。それは、ザックスはもういないんだと核心を持つことへの恐怖心からだったかもしれないし、ティファの不安気な表情が浮かんだからかもしれない。もしかすると、気丈に振る舞うクラウドに、どこか危うさのようなものを、私はその時感じていたのかもしれない。

「じゃあ、家ここだから。送ってくれてありがとう、クラウド」
「ああ。寝坊するなよ」
「んん?明日は何も予定ないから、ゆっくり寝てるつもりだけど…」
「予定ならあるだろ。ティファからそう訊いてる」

クラウドの言葉に、急激に襲ってきた睡魔と格闘しながら考える。何か、あったっけ。いや、やっぱり思い当たるものは何も無い。ふとフィルターを貰い忘れたことに気が付いたけれど、別にそれはいつでもいいものだし。

「…ない、なにも、……ぐぅ」
「おい、立ったまま寝ようとするな」

肩を揺すられて、片足を突っ込みかけていた夢の世界から意識が戻る。

「うぅん?何も訊いてないよ、私…」
「内容は俺も知らない。ただ明日の朝セブンスヘブンに来いとティファからの伝言だ」
「えぇ?それなら行かないわけには…」
「なら早く寝ろ」

眠くて眠くて意図せず間延びしてしまう言葉で、何とかそう返す。そんな私を終始呆れた顔で見ていたクラウドは、溜息をひとつ吐くと私の代わりに扉を開け、乱暴に私を中に押し込んだ。勢いがつきすぎて、壁に激突する。

「っいたた…、何てことするかなぁ!」
「近所迷惑だ。じゃあな」

それだけ言うと、私の返事も聞かずにクラウドは扉を締めて帰ってしまった。酷い。扱いが。無理矢理押し込まれてバランスを崩した時に壁にぶつけた左肘がヒリヒリと痛い。誰に言うでもなくぶつぶつと悪態を付きながらも、また襲ってくる睡魔に負けて、私はそのままベッドにダイブした。
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