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淡く白い靄の中で、ぼんやりと意識が揺蕩う。私は──、そっか。やっぱり死んだのかな。

「…ナマエ」

懐かしい声。この優しい声は…。

「ナマエ?まさか忘れちまったのか?」

…ザックス?

「良かった、忘れられてたらどうしようかと思ったぜ…。ナマエ、寝てる場合じゃないだろ?」

どこ?どこにいるの、ザックス。
靄の中で声だけが聞こえるけれど、ザックスの姿は見えない。

「心配するな、また会える。俺は、いつもお前の中にいるからな」

───うん、そうだったね。ザックスはいつも一緒にいてくれた。

「ほら、行ってこい。まだやることがあるんだろ?」

うん、わかってる。もう少しだけ、待っててね──。


頬をぺろりと何かに舐められる感覚で、私は目を覚ました。薄らと開けた視界に入ってきたのは、すぐ目の前にあったレッドの顔。

「…レッド?」
「目が覚めたか」
「私……っえ?」

ふと自分の身に起きたことを思い出して、お腹に手を当てる。───ない、傷が。確かに私はセフィロスの長刀に切り裂かれて、血も大量に出ていたはずなのに、何故か痛みも傷もなくて。何が何だかわからずに、レッドを見る。

「…おまえは、ジェノバ=レプリカの被検体だったんだな」
「え…?どうして、それを…」

何故そんなことをレッドが知っているのか。全く読めない話にただ頭が混乱する。

「前に宝条と助手が話していたのを聞いたんだ。レプリカ細胞は、傷を内部修復する」
「内部修復…?」
「ああ。元ある人間の細胞を、極端に活性化させるらしい。それによって傷は治るが……」
「…寿命を、縮めるんだね」
「!…知っていたのか」
「…うん」

目を見開いたレッドに苦笑して頷く。ということは、今回の怪我でまた少し寿命が縮んだのか。あまりゆっくりしてる暇もなさそうだな、なんて口に出さずに思う。
そんな時足音が聞こえてきて、私とレッドは少し身構えながら振り返った。

「──っナマエ!」

聞こえてきた声とその姿に安堵したのも束の間で、次の瞬間には私はクラウドの腕の中にいた。

「え、クラウド?大丈夫…?」
「それはこっちの台詞だ!…ナマエ、怪我は?大丈夫なのか!?」

一旦身体を離されて、珍しく物凄い剣幕で怒るクラウドに思わず目を丸くする。それがどこか嬉しくて、でも…ああ、なんて説明したら…。

「私が来た時には、フィーラーが傷を塞いでいた」
「…フィーラーが?」

頭を悩ませていたら、そう答えたのはレッドだった。多分、私が答えあぐねていたことを察してくれたんだと思う。クラウドに嘘をつくようで気が引けたけれど、この身体についてはレノとの取り引きもあって話すことが出来ないから助かった。何より、私の身体がもう長くはもたないこと、クラウドには言えない…。

「それも運命の流れということだ。ここでナマエは死ぬ運命にないんだろう」
「……そうか」

納得したのかしていないのか、クラウドはそれ以上追求してくることはなかった。その代わりにまた暖かい腕の中に囚われる。私の肩口に顔を埋めて、長く深い溜息を吐き出した。

「…クラウド?」
「心臓が、止まるかと思った…。ナマエ、あんたが生きてて良かった」
「うん…ごめん、心配かけてばっかりだ、私」
「いや……。ナマエ、」
「うん?……っん、」

突然、唇に感じる確かな熱。目の前にはクラウドの顔があって、口付けされてるんだとわかった瞬間、焦りが生まれる。

「ん…、待ってクラウド…っレッドが…」
「もういない」
「え?」

慌ててクラウドの胸板を押して無理矢理離れたら、クラウドは物凄く不満そうにそう答えた。レッドが先ほどまでいた場所を振り返ると、本当にもうレッドの姿はなくて。後頭部に回された手が私の顔をクラウドに向かせて、また唇を重ねられた。

「んっ…は、ぁ」
「ナマエ…、ん」

隙間を縫って入り込んできた熱い舌が私の舌を絡めとる。まるで、私が生きていることを、私の熱を確かめるような動きに胸が切なく締め付けられた。

「クラウド、…んっ」
「っは、……ん?」
「私は、ちゃんとここに、いるよ…?」
「…ああ、いてくれないと困る」

眉を下げて優しい声色で囁かれたそれに、今度は私からクラウドに唇を寄せた───。
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