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「ナマエ。…起きて、ナマエ」
「んんん…、ティファ…おはよ…」
「おはよう、ナマエ」

優しく身体を揺すられる感覚に微睡みから覚めて目を開ける。目の前にいたティファに起きたてのぼーっとした頭で挨拶をしたら、ティファがくすくすと笑った。

「…どしたの?」
「あんまり眠れなかったみたいね」
「えっ、?」

含みを持たせてそう言ったティファに、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。確かに、部屋に戻って眠りについたのは空が明るくなりはじめた頃だったけど。戻った時ティファはすやすや寝ていたし、なんてひとり内心テンパる。

「ふふ、クマすごいよ?」
「…うそ?」
「ほんと」

はっとして目元を隠すように手を当てたら、可笑しそうにまた笑われた。ティファ、絶対気付いてるよね、これ。

「さ、そろそろ出発だね」
「…うん、エアリスを助けなくちゃ」

そう言いながら立ち上がって扉に進んだティファが、くるりと振り返った。私も同じようにベッドから腰を上げて、首を傾げる。

「詳しくは聞かないけど、良かったね」
「っ!……うん、ありがと」

優しく微笑んだティファに、やっぱり気付かれてたと少し気まずさを感じたけれど、心からの祝福だとわかったから、私も素直に微笑み返した。可愛い顔で寝ているマリンは起こさずに、ティファに続いて部屋を出る。丁度隣の部屋から出てきたクラウドと目が合って、少し照れ臭さを感じつつ、いつも通りに声をかけた。

「…おはよ、クラウド」
「…ああ」
「ふふっ」

どこかぎこちない言葉の交わし合いに、隣にいたティファが吹き出して、クラウドはバツが悪そうに先に下に降りていった。見慣れた無表情だったけれど、少しだけ赤くなっていた耳に、愛しさを感じてしまう私はもう重症かもしれない。

「…あんたには世話になりっぱなしだ。この恩は忘れねぇ」
「困った時はお互い様さ」

全員が揃ったダイニングで、バレットがエルミナさんに頭を下げ、エルミナさんはそれに首を振って答えた。

「エルミナ」
「…あれから、考えてみたよ」
「呼ばれてる気がするんだ。だから……」
「私からも、お願いします。助けたいんです、友だちだから」

クラウドとティファの言葉に、エルミナさんは眉を下げた。

「エルミナさん。エアリスを必ずまたここに連れて帰ってくること、約束します」

神羅にはもう、誰も傷付けさせない。そう決意を込めてエルミナさんを真っ直ぐ見つめる。エルミナさんは、少しの沈黙の後に頷いてくれた。

「薄々わかってたのさ。いつか、こういう日が来るんじゃないかってね…。それでも……。エアリスを、助けてやっておくれ」

その言葉に、私たちは大きく頷いた。
エアリスの家を後にする際、起きてきたマリンがバレットに駆け寄った。それを邪魔しないよう、先に外へ出て待つ。
本当に、ここから先はもう引き返せない。それでも見つけたい大切な人と、守りたい大切な人がいるから。だから、何があっても私はもう迷わない。そう心の中で誓って、隣に立つクラウドを見る。視線に気付いたクラウドは、優しく笑って頷いた。

「待たせたな!それじゃ神羅ビルに乗り込もうぜ!」
「目的を忘れるなよ」
「わーってるよ、エアリスの救出だろ?」
「ああ。…行こう、ナマエ」
「うん、絶対に助けよう」

みんなで顔を合わせて、頷き合う。私たちは神羅ビルへ向けて、足を踏み出した。
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