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「…もう寝れそうか?」

そう聞いてから、これは一体ナマエにどう答えてほしい問いなのかと自分でも不可解に感じた。この聞き方じゃまるで──。
俺を見つめながら、どこか困ったように答えを探しているナマエに申し訳なさを感じる。

「明日も早い。戻るか」
「───まだ…」

少しの気まずさと名残惜しさを感じながらも、これ以上困らせないようにとそう言って、ナマエに背を向けて一歩踏み出した時。服の裾が引っ張られる感覚と、消え入りそうな程小さな声が聞こえて足を止めた。

「…ん?」
「…まだ……まだ、一緒にいたい…」

先ほどより幾らか聞き取りやすく、でも小さく呟かれた声が聞こえた瞬間、思うより早く俺はナマエの腕を取って強引に歩き出した。

「っえ、クラウド…?」

俺に手を引かれながら戸惑った声を上げるナマエに構っている余裕もなく、エアリスの家から少し離れた小道まで早足で歩く。
くそ、反則だろ。抑えていた感情が昂るのを自分でも感じて、情けないが余裕がなくなる。本当に、こいつは何でこうも俺の自制心を無くさせるんだ。
簡易的な木ばりの壁にナマエを押し付け、困惑したように俺を見上げるナマエの唇を、噛み付くように自分のそれで塞いだ。

「…っん!」

至近距離で見開かれる目と揺れる珊瑚色に、ひどく煽られる。柔らかい唇を何度か啄んで、ナマエから吐息が漏れれば、もう抑えなんて効かなかった。

「っ、…くら、うど…」
「…ん?」

口付けの合間に震えた声で名前を呼ばれ、一度触れていた唇を離して聞き返す。鼻先が触れる程の距離で、顔を真っ赤にしたナマエが小さく口を開いた。

「クラウド…すき」
「…っ!」

呟かれた言葉が耳に届いた瞬間、全身の血が沸騰するような感覚を覚えて、残っていたほんのわずかな理性は全てどこかへ飛んでいった。

「んんっ、…!」

再び強引に唇を奪って、薄く開かれた瞳を見つめたまま、舌でナマエの唇をなぞる。びくりと強ばったナマエに構うことなく、息継ぎの合間に開かれた唇の間に、舌を差し込んだ。

「っふぁ…、んっ…」

戸惑ったように逃げる舌を追いかけて、自分のそれを絡める。漏れた嬌声に気をよくして、更に深く唇を合わせた。
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食べられてしまいそうなくらい深い口付けに、頭がくらくらする。キスなんて、初めてでも何でもないのに、クラウドの舌が熱くて頭の芯まで溶けそうになる。腰に回された腕でなんとか支えられて立っていられるけれど、それがなければとっくに腰が抜けてる。

「…は、…っ」
「ん、…っぁ、」

クラウドから漏れる小さな吐息と、耳を塞ぎたくなるような水音が聞こえて、本当にどうにかなりそうだと思う。上顎を舌先で擽られると、ぞわぞわと背筋が痺れる。舌を吸われて、甘噛みされて、思考も身体もどろどろに溶けてしまいそう。自然と生理的な涙が浮かんで至近距離のクラウドの顔がぼやける。吸い込まれそうな翠玉の瞳の奥に、情欲の色が浮かんでいて。
クラウドもこんな顔するんだ。その顔をさせているのは私なんだと思ったら、嬉しくてまた涙が溢れた。

「は、…ナマエ…」
「…っん、…すき、…だいすき、っぁ」

深く絡まる口付けの合間で、熱に浮かされたように好きと繰り返す。ぐっと堪えるように眉を寄せたクラウドがぼんやり見えて、ゆっくりと唇が離れて銀糸が繋がった。

「ナマエ…、俺もあんたが好きだ」
「…っ、」

真っ直ぐに見つめられて、紡がれたその言葉に、また頬を涙が伝った。びっくりするほど優しく微笑んだクラウドが、その涙の跡に口付けて、それからまた唇を重ねられる。ついさっきまで飽きるほどしたはずなのに、またすぐに熱が上がるのを感じて自分でも驚く。

それから私たちは、夜が耽るまでぴったりと寄り添って離れなかった───。
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