ついのべ

空におちる夢をみた
140字の文章 配布元・お題は後書きに記載


追いかけられているか逃げているか戦っているか落ちているかそんな悪夢ばかり見ている。その日の"敵"はシルクハットを取って一礼した。背中には尖った尻尾が見える。「いやあ、いい悪夢を見てますね。いいですよ貴方」訳が分からないまま私に向かってきた敵を尻尾で一掃する。「実においしそうだ」勘弁してほしい。私は子供でも若くも美人でもない。逃げようとせめて落ちようとするよりも"敵"のが速かった。苦痛よりも解放感があり絶望よりも一縷の光が見えた。気がつくと朝になっていた。その日から悪夢を見なくなった原因を未だに見つけられない。
October.2

ソイラテ
「何その飲み物」男のくせにこの色の違いが分かるとはなかなかじゃないか。さすが私の腐れ縁男。「牛乳じゃないでしょ?」「ソイラテ」「トルコ原産?」「違うよ」「じゃあタイ?」その発想の起源は不明だが、心地よいからもう少し日常においておきたい。不幸と多忙の真ん中に、ミルクよりも淡い幸せ。
October.1 後書き

彼岸花
ずっと、あなたの血の化身がこの花だと思っていたのです。今年もこの季節がやってまいりました。予兆もなく咲き誇るそのアカは、あなたを失った日とよく似ているのです。今年もたくさんの花びらが天へと向かいます。あなたのいるところにも還っていくのでしょう。そう、この赤はその日と同じく失ってしまった私の涙でもあるのです。
September.29 後書き

@kisarigu様 「繰り返すラストシーン」
ダメよ逃げて。声にならない絶叫。何事もないように歩いていく彼。私はこの先を知っている。もう何度も繰り返しているラストシーン。駆け出して手を伸ばす。もう少しで彼に届きそうな時、鈍い銃声傾ぐ愛しい人。今回も救えない。もう一度、今度は救ってみせる。私は首の懐中時計の針をもう一度回した。
May.13 後書き


春の雨の匂いが好き。やわらかさを孕んで、地面に降り立つ贈り物。今も抱きしめる強さで、私たちは愛情を測ることはできないけれど。風がまた、アスファルトの匂いに混ざって好きな匂いを運んできた。私は、今日も、抱きしめる優しさであなたの愛を思い出すのです。今日もありがとう。
March.12 後書き

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