ついのべ

空におちる夢をみた
140字の文章 配布元・お題は後書きに記載

マスク
付き合ってから数カ月。いつも彼は笑顔でいてくれる。喧嘩しても、友達の愚痴も、文句も言わず話を聞いてくれる。そろそろ次の段階に進みたいな。でも私からは言えないしできない。そっと手を彼の頬にあてる。肌とは違う感覚がした。耳に紐。彼がいつもつけていたのは笑顔の口が描かれたマスクだった。
April.17


桜の花はもう全部散りましたか? ここからが私達の出番です。ふわふわふわ。ふわふわふわ。桜の若葉をくぐり抜け、目には見えない輪っかをかけて。嘆いていた過去と不安だった未来にはお別れを。俯いていると転ばなくては済みますが、壁も見ないふりしてしまうものです。ようこそ、ここが春本番です。
April.17


聞いていて。これで最後にするから。この吹雪に乗って、あなたの所まで届いてほしい。この願いが叶うのならば、私の未来は代償として捧げよう。どうか、この体が消えても、この奇跡が最初で最後の永遠になりますように。私とあなたの中にありますように。次の恋に出会うことなく私は消えてしまいたい。
December.27

プレゼントはあなたとおそろいの思い出がほしい
あなたのかげを探している。私はクリスマスもイルミネーションもダイヤモンドもいらない。けれどもしプレゼントに何かもらえるとするならば、あなたのかげでいいのです。同じ空間にいさせてください。白い息を空に還しながら必死にそのかげを探している。視界の隅のやけにカラフルな光が邪魔をする。
December.26 後書き


私は世界を待っていた。凍てつく地面の上を歩いて、寒さに刺されながらずっと待っていた。誰も私が迎えに来ないことを知っていたから歩き出したが、それは待っているものから遠ざかっているのではないかという恐怖を孕みながらも、それでも足を止めることはできなかった。それから数年。結局私が気づいたことは、冬の太陽がどれだけ穏やかだということだけだった。
December.1 後書き

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