ついのべ

空におちる夢をみた
140字の文章 配布元・お題は後書きに記載


生まれ変わったら一緒に空を自由に飛びたいね。そう言って屋上から飛び降りてからどれくらい時が経ったのか。立夏を迎えるまでの短期間とはいえ夢は叶った。僕達は一緒に空を泳いでいる。眼下を子達が賑やかに駆け回る。薫風の中生まれることはないがどこかできっと存在する僕らの子どもの姿が見えた。
April.25 後書き


美しい女性を花に例える人たちがいる。確かに彼女は桜にも薔薇にも向日葵にも秋桜にも似ていた。僕は彼女によく花を贈った。今はもう隣に彼女はいない。「花は枯れたら死ぬのに、気軽に贈る貴方を理解できない」と言われた。それでもなぜか花を見ると、彼女がいた頃よりも美しい夢を見るようになった。
April.25 後書き


いい匂いの風を受けて走る、走る、走る。
草の匂い?
それとも葉っぱ?
夏の匂いだよ。上からおとうさんの声がした。もう少しで夏が来るんだって。おかしいな、ついこの前まで桜が咲いていたと思ったけれど。やがてはじまる夏に向けて進化する空気を口から大きく吸い込んで青空に向かって吐き出した。
April.25 後書き

白昼夢
世界を止めてくれ。勇者の服だったものを着た男は私の足をつかむ。怖かった逃げたかった叫びたかった。自分の現在さえ変えられないのにできるわけがない。だが男はそのどれも許さない。足を動かす前に男の肉と皮膚は霧散し骨も空洞に呑まれた。眼下に世界史の教科書。私の世界は教室の片隅の青空の下。
November.29 後書き


呼吸を掠めるように泡が揺らぎながら水面へ向かっていく。海底からは自分の肌の正確な色は分からないが何か深い色で思考の間隙を埋めるかのごとく指の間には水かきがついていた。混乱した脳内を鎮めようとすると、頭には滑らかな丸みに触れる。真実は時に唐突で信じたくないものばかり突きつけてくる。
August.16 後書き

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