罪悪感
「ほら、びっくりした? あちしは悪魔の実の能力者なの」
ベンサムは突然、僕の頬に触れたかと思えば、次の瞬間には僕の顔を鏡にそのまま写したかのように真似して見せた。
顔も同じなら声も同じ。彼は驚く僕を笑いながら、それから左手で自分の顔に触れた。パッといつもの彼に戻ったのをきっかけに僕が「凄い」と呟くと、彼は「アラ、でも役に立たないわよ」と自傷気味に言った。
「悪いことにだったらいくらでも使える能力ね、この能力のこと、人に話したらあまり良い顔はされないわ」
だから今まで話さなかったのよ、ごめんね。と彼は申し訳なさそうに笑っている。
「たしかにそうかもしれないですけど、でもね、刃物だって人に向けたら危ないけど、食べ物を切る為には必要です」
その力であなたはきっと、大事な人を助けることが出来ますよ。僕がそう言うと、さっき僕がしたようにびっくりとした顔を僕に向けた。
「そうかしら」
「きっとそうですよ、あなたほど優しい人が、悪事にそれを使うなんて僕は思えない」
「……そうだといいわね」
彼はいつもの明るい表情を曇らせて、僕に「好きよ」と言った。
罪悪感// 2020.8.10
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