つづくことば その2

次の言葉の続きを考えましょう。

詩や小説のタイトルにするのも可


*眠い歌
目を閉じて、君は溜息をつくような切なさで歌を歌っている。
君の歌は夕暮の世界に溶け込んで、控えめに弾んだり震えたりする。
窓から夕焼けの世界に向かって、朗々と歌う少女の存在はいかにも絵画的で。
忘れ物を取りに戻っただけなのに、そんな幻想的な光景を目の当たりにしてしまった僕は息を呑んだ。不意打ちだった。
長い黒髪を風に緩くそよがせて佇む少女はいとも簡単に僕の意識を奪い去ってしまった。延々見ていたかった。と、同時に即刻、彼女と関わり合いたいと思った。
きれいな歌だね。
僕は絞り出すようにして彼女に声をかけた。君はやおら振り返り、教室の入り口で茫と立つ僕を見据える。薄い色の瞳が僕を射る。驚きで見開かれた丸い瞳が愛らしかった。
母の子守唄なの。私が初めて覚えた歌。
苦笑いしつつ、彼女はそう言った。暫く躊躇うように視線を迷わせた後、また歌い始めた。唇から紡がれる音は橙色にとろとろに溶けて、君を茜に染めてゆく。
この歌は僕の青春だ。朱い、青春だ。
そう、心中で呟く。
僕の跳ねっ返りたがりのエネルギーを全部君に使ってしまいたくさせるような、魔性の歌だ。柔らかなメロディーが静かに収束していった。
茜色の君が振り向く。
慎ましい淑やかさで君が笑う。
くらり、と鋭い目眩が僕を襲って――


*育つまで飲む水
こぽこぽと息をはく音が脳に直接響く。少しだけ口を開けると、そこから真珠のような粒が次々生み出されてゆく。真っ暗闇に真っ白な粒が浮上してゆく。
きれい。
触りたい。
手を伸ばした。
未発達な僕の、短い、柔らかな指は真珠を掠めて水をかき回す。温い水がごぽごぽと撹拌されて、僕を包む世界がぐらりと揺れた。
もう一度、口を開ける。
水が身体の中に入ってゆく。
肺が水で満たされ、溢れる。
飲み込んだ水は甘かった。
肺を満たす水は僕に呼吸をさせる。
たゆたう感覚に僕は目を閉じ、水の冷たさに僕は集中した。
ああ。
今、僕は。

生まれるために生きてる。


*キス、その後
目があって。
途端、恥ずかしくなって目を伏せる。
そんな、初恋一ヶ月目の私たち。


*生活は続く
あんなに愛した君が死んだ後も。
あんなに憎むお前が生きていてさえも。
何故に世界は無慈悲に動き続けるのか。


*甘い音
こつこつと革靴がリノリウムを踏みしめる音。
そんな硬質で高飛車な音が、わたしはどうにもならない程、大好きで。
早くこないかな。
早く会いたいな。
靴音を聞くたびに高鳴る胸。
そっと耳を澄ます。
靴音はまっすぐわたしの部屋の前に向かい、そして、ぴたり。と、ドアの前でとまった。


*雨の匂い
今日もまた、雨が降った
湿っぽい涙を誘う、澄んだ匂いがゆるりと世界を包む
あなたはまた泣いただろうか
会えないあの人を思って、またほろほろと
私の傘は小さくて、あなたの雨を止められない
やりきれなさで靴を宙へ放る
まっすぐ靴は空へ吸い込まれ
明日は晴れよと一人、願った




お疲れさまでした。


感想などありましたら…
*今回は全体的にちょっと長めです。
育つまで飲む水=羊水です。一応、胎児目線。でも、精神年齢高そうですな^^;
少年が初恋に落ちる瞬間は夕焼けが似合う気がします。夕焼けって綺麗ですよね。鮮やかな橙と淡い黄が混じりあって、切なげなのに情熱的。変化を望み、変化を厭う。思春期の少年少女を情景と絡めつつ、上手く表現できるようになりたいな。(´・ω・`)
なんか、そんな感じです。
これからは、なるべく情景描写に力をいれるようにしよう(`・ω・´)ガンバル



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[2012.0925]




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