NoTitle

溜息を吐く。
死んでるんだと思った。
ねえ、と呼びかけても返事がないから。
うつ伏せになって倒れて、呼吸をしている気配だってなかったから。
だから、これは死体なのだと。
確信した。
自室で死んでいるこいつを私は知らない。
流石に触れる気にはなれず、悪いとは思いつつも足蹴にして、仰向けにしてみる。
顔色が只管に悪かった。ぴくりとも動かない。
やっぱり、死んでる。
どうして知らないやつがこんなところで。
暫く考え、わからなかったから、考えることを止めた。
取り敢えず、こんなところで死なれていては非常に邪魔だ。
私の部屋は非常に狭い。男一人が倒れているだけでひどく窮屈になってしまう
しょうがない。
私は一つ溜息を吐くと、その男をなるべく体が触れないようにして抱き上げ、
自室のただ一つの窓から、
ぽーんっと、
落下させた。
アパートの六階、地上から約十八メートル。
ふと、落下地点に歩行者でもいたらどうしようかと、考えたが、よくよく考えたら、部屋の窓は荒廃しきった裏山に面している。
どうせ、人もいまい。
ばき、どす。
アパートの壁に男がぶつかる音が響く。
次いで、べしゃという肉塊が地上に叩き付けられる音も。
はー、やれやれ。
私はその音を聞き遂げたのち、自室の窓を閉めた。
やっと、足が伸ばせる。
私は部屋を占有できる喜びを感じながら、その日は眠りに落ちた。

さて。
次の日。
…………。
私はがっくりと肩を落としていた。
やっぱり、いるんですね……。
朝はいなかった。
だけど、出社して帰宅したのち。
やはり、それはそこにあった。
これで何度目だろう。
捨てる場所を変えるべきだろうか。
ねえ。
取り敢えず、男に呼び掛ける。
返事は、矢張り。

無い。


more
[2013.1123]




category:


comment

お返事はmemoにて

name:
url:
message:

認証コードを入力してください
master only...?


PageTop

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -