制服は私の抜け殻。
家に帰った途端、私は重たいその抜け殻を一枚一枚剥がしてゆくの。
制服なんてただ体に纏わり付いているだけで、実は無意味な「抜け殻」で。
とっても邪魔じゃない。ねえ。
私は剥がす。脱ぐ。
真っ赤な林檎色のタイ、プリーツの入ったスカート、そして私には不似合いな濃紺のセーラーも。全部、全部。
私、すっかり大人なのにね。
教師も親も私にすぐ、この服を着せたがるの。他の服で学校行っちゃいけないって言うのよ。まるで蛹を脱するのを阻まれているようで、いらいら。
私、もう蛹はまっぴらなのにね。
……でも、それも今日で終わり。
だって、私卒業するんだもの。
この抜け殻を強制していた、あの学校から。
もう着なくて良いのね、と思うと清々しかった。私はそれほどにこの「抜け殻」が好きではなかったし、忌んですらいた。画一された集団なんて、おぞましいと考えていたから。
けれど、その実、そうではなかったらしい。
私はこの制服を着なければならない強制力が自分の前から消えると気付き、確かに、はっきりと淋しいと思ったから。
これを、着る事も無くなって仕舞うのね。
そう言って、制服に向き合った卒業式前日。制服に触れたあの重み。
私が嫌っていたあの重みは私の今までの学園生活全てを吸い込んだ結果の重さであると悟った時、私はただ世間擦れを気取っていただけのあまのじゃくだと気付いた。
そして、制服の所為でなく、自分の所為で大人になりきれないでいると気付いてしまって、ちょっと恥ずかしかった。
でも、そんな事ももう無くなってしまうね。
私は今、否が応でもこの制服を脱いで、前へ進むしかないのだから。
そうして。
私はセーラーを箪笥の一番奥に突っ込んだのだった。
追記よりあとがきんぬ〜
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[2013.1101]
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