映画みたいな恋したい | ナノ

12 大胆なアプローチ

ミナコから送られてきたバレンタインのプレゼントは、予想を遥かに超える物だった。
胸をときめかせながら包装紙を開けたアランは、年甲斐もなく歓声を上げた。




ハートの、大きなチョコレートが一つ。

そこには、可愛らしくメッセージが書いてあった。



   大好き!!



ピンクのアイシングが可愛らしい。これはミナコの筆跡だろうか…ああ、なんだか凄くドキドキしてきた……。

「この大きなハートは…ミナコの気持ちと思っていいのかな?」


食べてしまうのが勿体無さすぎる。しばらく考えたアランは、決心した。
そうだ、これはこうしよう!

チョコの下に、もう一つ包みがあるのを発見した。
なんだろう…?けっこう大きいな……。不思議に思いながら包装紙を開けると、そこには……!


「マフラーだ…!」


渋めのチェック柄のマフラーだった。アランはさっそく首に巻いてみた。


「温かい……ミナコ…ありがとう……」

メッセージカードが入っていたので読んでみる。



To,Alan


喉の調子はどうですか?咳をしているようで心配です。
これを巻いて喉を保護してね。お大事に…そして、お誕生日おめでとう!!


xxx From,ミナコ



「ミナコ……君って人は………」




マフラーよりも何よりも、ミナコ……君のその存在や言葉、心遣いが、私の心を、そして身体を温かくしてくれるのに。

君は気が付いているのかな?




*****





『あー…ダルいよね……』

『もう…そんなに飲むからよ?』

『これが飲まずにいられっかっての!アイツめ……』

小夜が怒ってる。どうやら、旦那さんと喧嘩したみたいだ。彼女は二日酔いなのだった。

一緒に職場へと向かいながら、コンビニに寄って、二日酔いに効くドリンクを買う。そして小夜に飲ませるため、二人で会社の休憩室へと直行した。出社時間まで、まだ時間があったからである。


『う〜んまずい…もう一杯!!』

『そのギャグ古いってば……』

小夜の台詞に、ミナコが苦笑しながら返事をしたら、タイミングよく携帯が鳴った。

『あらん、アランからかしらん?』

『小夜……』

ぐでんとしながらそんな台詞を言う小夜に、ミナコは呆れた目を向けながら、携帯をチェックした。とたんに目を見開く。

『……アランからだ!!』

『うっそマジか!!』

小夜が二日酔いもなんのその、がばりと起き上がると携帯を覗き込む。そこに書かれていたメッセージは……







To,ミナコ


素敵なプレゼントありがとう!嬉しくて言葉には表せないよ。君がこれを選んでくれている間は、私のことを考えていてくれたと、うぬぼれてしまいそうだ…。


チョコはね…勿体無さすぎて食べられそうもなくて、大事に飾っておくことにしたよ。貧乏性だなんて言わないでくれよ?

マフラーは……フフ、今日の夜、ある番組に出るから時間があったらチェックしてみて!


Love you, From,Alan


http://XXXX,XXX,XXXX




*****




『行間からハートが飛び出しそうなメールだわね……』

『そ、そうかしら…』

ミナコの言葉に、小夜は笑ってきた。

『どっからどーみてもそうでしょ!ミナコ…あんたって本当に鈍いわねぇ…』

『…………』

『ま、オジサマの本気を確認するなら、その、下に書いてある番組だか何だかを見ればいいんでないの?』

小夜はそう言うと、メールに添付してあったアドレスを指差した。

『さてと……仕事してこよっと』

出口へと向かいながら、小夜は振り向くと言った。

『結果を報告したまえ!』

『馬鹿…』




*****




そして夜―――。

アランが教えてくれたアドレスにアクセスしてみたミナコは、目をこれでもかというほど見開いた。


アランが、マフラーをしているのだ。ミナコがプレゼントしたマフラーを、である。自分で選んでプレゼントをしたのだ、見間違えるはずがなかった。

それを身に付けたまま、インタビューに答えるアラン。


「素敵なマフラーですが…室内ではちょっと暑くないでしょうかね……」

司会者の言葉に、アランは微笑む。

「喉を傷めていてね、保護したいのと…それに……」

「それに…?」

「私の大好きな人がプレゼントしてくれた物だから、手放したくないんだよ。ずっと身に着けていたくてね……君にもそんな経験、ないかな?」

「だ、大好きな人?!それってどなたなんですか――」

司会者の慌てたような声に、観客の悲鳴が重なる。
アランは嬉しそうな顔をしつつ、囁くように言った。

「それは……ナイショさ…」

その後、会場は大混乱となってしまった。司会者が場を収集しようとあー、とかうーとか言っている。

アランはそんな光景を楽しそうに見つつ、ふいにカメラ目線を送ると、その手を唇に持っていき―――、


CHU☆


投げキッスをしてきた!


『う……あ……え、ええええ?!?!?!』


PCの前で、完全にフリーズするミナコ。

アランの言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る。




【私の大好きな人がプレゼントしてくれた物だから、手放したくないんだよ】




心臓がバクバクしてしまい破裂しそうだ。
顔を真っ赤にさせて、口をパクパクしながら、ミナコは思った。


アランって大胆すぎる!!と………。


(H24,03,01)


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