映画みたいな恋したい | ナノ

11 それ以上の価値

今日はバレンタイン。

いつもなら、ミナコはこのイベントを冷ややかな目で見ている方だった。企業の策略には乗らない性質でもあった彼女が覗いているもの、それは……。


『可愛いなぁ…これなんか良さそう』

『アランに?』

『な…ッ…そんなんじゃないって……』

友人の小夜の突っ込みに、タジタジになるミナコ。

『な〜に言ってんだか。そんな顔しときながら、違うなんて言わせないわよ?』

そう言いながら、小夜はミナコの頬を突っついてきた。

『そんな顔って…どんな顔?』

ミナコの恥ずかしそうな顔を見ながら、小夜は言った。

『私は恋してますって顔!』

『もう!ひどいよからかうなんて……』

『あはっ……ごめんごめん!これなんか、どう?』

苦笑しつつ、ショウケースを覗き込んだ二人だった。




*****



『変じゃないかなぁ…やりすぎ?ううん、これくらいは大丈夫よね?』

ひとりごとをブツブツ言いながら、買ってきた商品をラッピングするミナコ。丁寧に、丁寧に愛を込めるのを忘れない。
何度も清書し直したカードも添える。

『よし、っと!あとは…メール…だけど……これくらい、良いよね……?』

誰に言っているのかわからない言い訳をすると、彼女はえいっとメールを送信した。









To,Alan


こんにちはアランさん。お元気でしょうか?ミナコです。

今日はバレンタインデーですよね?あ、そちらでは1日早いのかしら…?
ちょっと早いけれど、私からバレンタインのプレゼントです。メールでは、気持ちを伝えられるか不安ですが、貴方にどうしても伝えたくて、気持ちだけでもと思い、メールしてしまいました。 


大好きなアラン……これからも、ずっと、ずっと貴方のファンです!!



お仕事頑張ってください。また、メールしますね♪



XXX From,ミナコ 


P,S
遅れてしまいますが、バレンタインのプレゼントをそちらに送りました。劇場宛てにしたのですが……届くかしら?




*****



アランは、朝の運動をしていた。
朝といっても、もう昼に近かったが……この運動は、いつでも時間のある時にするに限るのである。


「16……ん…ッ……17……は…っ……18……19……あと1回…ッ」


息を切らしながらアランがしている運動は――腹筋運動。本気でダイエットを開始したアランだった。


(このお腹をなんとかしないと…ミナコに笑われてしまう!)


汗だくになりながら、スクワット、腕立て、ランニングをするアラン。
腹筋運動は最後の仕上げだった。


「20!やったぁ!!」

ヘロヘロになりながら、床に寝転がるアラン。乱れた息を整えていると、ピピピ、とアラームが鳴った。アランはとっさに時計をみる――時計は10時を示していた。

「もしかして――」


乱れた息もなんのその、素早い動作で起き上がると、携帯にダッシュするアラン。そのまま、ベッドへとダイブした彼は、メールをチェックする。

「やった、ミナコからだ♪どれどれ……?」

ウキウキしながらメールを開いたアランは、次の瞬間、叫び声を上げたのだった。


「オーマイゴッド!ミナコ………」


アランの頬が赤いのは、運動のせいではないミナコ。のメールに興奮しているためである。


「私だって君のこと……愛してる……って言ってもミナコには聞こえないんだよな…」


携帯を握りしめながらゴロゴロとベッドを転げまわるアラン。とても壮年期の男性とは思えない行動であった。
もどかしい気持ちが、アランをそのような行動に走らせるのだ。


「日本は遠いな……」


アランはそうつぶやくと、もう一度ミナコからのメールを見た。
ミナコからのメールは、保護フォルダにすぐに入れて、何度も読み返す彼である。
彼女を思いながら……。



「プレゼント……劇場宛て……か。楽しみだな……ってそれって!!」


大変だ、どうしよう!!
そう叫び、髪を振り乱して興奮するアラン。

プレゼントは嬉しい。それが気になる女性から貰えるものであるのならなおさらである。

だが、アランにとってそのプレゼントはそれ以上の価値があった。


「ミナコの自宅の住所をゲットできる〜〜〜!」



こうしちゃいられない!!

いてもたってもいられないアランは、速攻でシャワーを浴びると、劇場へと向かったのだった。




そう、アランは深く考えていなかったのだ。
日本から遥か遠いニューヨークまでプレゼントが届くには、数日以上がかかることを。



その後数日間、劇場に張り付くようにいたアランは、共演者に不審がられるのであった……。


(H24,2,14)


prev / next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -