※教授×生徒
夜も更けたホグワーツの地下室。スネイプは蝋燭の灯りを頼りに、専門書を読み進めていた。その本は彼の専門である薬学ではない。スネイプの眉間のシワはいつもの3倍になっていた。
「きょーじゅー」
ノックもせずに、スネイプの元へ一人の女生徒が駆け込んできた。
スネイプはもう諦めている。最初は色々と理由をつけて追い返したり、叱ってみたり、罰則をしてみたりしたのだが、全てにおいてこの生徒には無効であると悟ったからだ。
追い返すとダンブルドアが出てくるし、叱ってもうっとりと微笑むだけで効果が皆無。罰則など言い渡そうものなら恍惚の表情で喜び、いざ罰則となれば調合どころではなく、ぼんやりするばかりなのである。
「…何だ。我輩は忙しい」
出来るだけそっけなく返事を返したスネイプに、彼女は特にショックを受けた様子はなかった。おそらく慣れているのだろう。
「なんで?今日はレポートの採点もないし、明日は授業もお休みだから忙しいわけないじゃん」
「…………」
「あ!ひょっとして」
「なんだ」
「浮気に忙しい――」
「冗談がすぎますな」
スネイプは呆れた。第一浮気とは何だ? 我輩は独身だし、恋人でもあるまいに…。喉元まで出かかった言葉をすんでのところで堪える。絶対に面倒なことになるのがわかっていたからだ。
「とにかく帰れ。我輩は忙しい…」
そう言って本に視線を落とす。しばらく読み進めていた時だった。後ろに人の気配を感じたスネイプは振り返る。そこにいたのは、先程追い返したとばかり思っていた彼女だった。
「スネイプ先生…これって…!」
「馬鹿者覗くな!」
スネイプは杖を振り、本棚から分厚い百科事典を一冊飛ばした。それは彼女の顔面にジャストミートする。
「へぶっ」
「まったく…油断も隙もない……」
ブツブツと文句を言っているスネイプ。顔面から落ちた百科事典を両手で抱えながら、彼女は叫んだ。鼻からは鼻血が出ていた。
「だってそれって……演技の本?」
「……だったら何だ」
プイ、と横を向いたスネイプを覗き込みながら、彼女は大声で言った。
「必要ないと思いますけど」
「そんなことはわからん。我輩だとて初めてのことなのだ。まさか我輩が……我輩が……」
そこで言葉を切ると、スネイプはワナワナと震えだした。
「我輩ともあろう者が……大勢のマグルの前で演技をするなど……ッ」
ダンブルドアめ! 我輩は俳優ではない、教師なのだ馬鹿者! パワハラ上司殺す!
ブツブツと黒いオーラ―を出しているスネイプを見ながら、彼女は夢見る瞳で呟いた。
「いいなぁ〜マグルの人達。私もスネイプ先生のショーが見たかった……」
「絶対見るな見たら殺すぞ」
「フフ…か〜わいい! 照れ屋さんっ♪」
ニコニコ笑っている彼女を横目に、スネイプのストレスはどんどん増大していくのだった……。
「なになに?劇のタイトルは…【我輩こそがプリンスだ】?」
「勝手に読むな馬鹿者!」
「へぶぶっ」
「………次は百科事典では済まんぞ」
「………照れ屋さんなんだから」
*****
どうやらスネイプ先生は、USJのアトラクションの目玉として演技をするらしいです。
脚本を書いたのは、どうやらロックハートらしいです…
(H26,7,20)
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