※教授×生徒。06.“視線”の続き




とろりとした、黄金色の液体が、ゆっくりと流れていく。
溶けかけたバターと混ざり合い、ひどく食欲をそそるそれは、私には、別の何かを連想させた。


そう、皆にとってはただのおいしそうなこのホットケーキも、私にとっては、あの独特の動きをするローブと、眼差しをもったある人を思い出させるのだ。
特にあの、魅惑的な声を……。

「レイ、どうしたの?食べないの?」

不思議そうな友人の声にハッとして、私は慌ててナイフとフォークを掴んだ。

「もちろん食べるよ」




*****



どうかしてる。
ホットケーキの生地の上を流れるはちみつを見ただけで、彼の事を思い出すなんて。
彼の……あの声を思い出すなんて。


「ジャスミンか……その花言葉は……」


あの時の、彼の眼差し。
伸ばされた手。
ほのかに感じる温もりと薬草の香り。
そうして……彼の言葉は、まるで…まるで……甘いはちみつのよう。


ベッドへと横たわり、甘く吐息を付きながら、私は何度も、何度もあの時の記憶を呼び覚ます。
記憶は薄れるどころか、ますます鮮明になって……まるで彼の声のように、あの甘い、はちみつのように私の心と身体はとろけていった。


「スネイプ……先生……」


耐えきれずに私のくちびるからこぼれ落ちた囁きは、これも酷く甘くて。
あまりの甘ったるさに、恥ずかしくなった。誰にも聞かれていないのに。




スネイプ先生…貴方のすべてに感じる甘さに、私、はちみつのようにとろけてしまいそうです…。

もしも私がとろけてしまったとしたら、スネイプ先生、貴方は私を食べてくれますか?


そんな乙女な感情に支配されながら、夜は甘く更けていった…。


(H25,08,18)

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