教授の甘い囁き声…。
教授の皮肉げな声…。
教授の怒った声…。
教授の悲しそうな声…。


ああ、あなたのどんな声を聞いたとしても、私の心は切なくなる。
その声が私に対してではないということが分かれば、それはなおさらのこと…。




今は魔法薬学の授業中。例によってスリザリンはとっても贔屓されている。ドラコ坊ちゃまが教授に調合の仕方が良いと褒められていた。
その後、ドラコ坊ちゃまがハリー達にちょっかいをだしていたけど、それを反論しようものならさらにグリフィンドールから減点するんだもんね教授ってば。大人げないなあ。

ハリーは違うんだよ?あなたの大嫌いな彼じゃないのに…。私は溜め息をついた。
それにそれに教授ったら授業中は私にはほとんど話しかけてこないのだ。いっつもお気に入りのドラコ坊ちゃまか、ハリー達だもんなぁ。
私にほとんど話しかけてこないのは、私達の関係がばれないようにする為だ。わかってる。わかってるんだけど……嫉妬する気持ちが抑えられないの。

そんなにその子達がいいの?
私より、魅力的なの…?
ねえ、応えてよ?教授ったら!

ホントはそう言ってあなたを攻めたい。
いくら恋人同士なのがばれない為とはいえ、悲しすぎやしませんか?

それとも、それとも……私の事、本当に嫌いになっちゃった?

私は、構ってくれない淋しさが強くて本当に悲しくなってきてしまった。
ハーマイオニーが訝しげな顔をしてきた。

「ちょっと、大丈夫?具合悪いの…?」

と聞いてくる。そうなんだハーマイオニー、私は病気なの。そしてこの病気はどんな名医でも治せないんだよ…。
まさかそんなことを彼女に言う訳にもいかない。私は慌てて笑うと、

「大丈夫だよ、ちょっと疲れただけ…ありがとハーマイオニー…優しいね」

私がそう言うとハーマイオニーは頬を染めていた。
ああ、可愛いなあハーマイオニーってば。
私も女の子だったら、教授にももっとわがまま言ったり、思ったことをもっとずばっと聞けたりするんだけど…。
今は何故か男の子の身体だし。この状態は、秘密な恋人関係に決してプラスには働かないよね?
ああ、切ない……。
私はまた悲しい気持ちになって鍋を掻き混ぜた。


やっと授業が終わって皆が教室から出て行こうとした時、私は突然教授に呼び止められた。

「Mr,カンザキは残りたまえ……話がある」

私が呼び止められたので、ハーマイオニーはちょっと心配そうなそぶりをしていたけど、私は安心させるように笑うと、

「ごめん、先に行ってて。大丈夫だから……ねっ?」

とハーマイオニーに言った。
ハーマイオニーは頷くと教室を出て行った。

「お話とは何でしょう?」

私はそう言って教授を見たんだけど…教授?どうしてそんなに不機嫌な顔をしてるんです?眉間に凄いシワを刻んで…。

「……見せつけているのかね?」

はあ?見せつけているって、何を?

「見せつけているって……何のことですか?」

本当に訳がわからない。見せつけてるのはそっちでしょう?私以外の生徒にばっかり話しかけて…。今日はスリザリンのローラにまで話しかけてた!
教授の浮気者〜!私はだんだん腹が立ってきた。
教授は不機嫌そうに、

「Ms,グレンジャーと仲良く調合しおって…。我輩に見せつけているのかねと聞いているのだ!」

と言ってきた。
ちょっとどういうことさ?見せつけてんのはそっちでしょうが!私は、本当に珍しく、切れた。

「ひっどいですセブルス!見せつけてるのはそっちでしょう?ドラコとかハリーとか…果てはローラにまで声をかけて…僕には全然話しかけてもくれないじゃないですか!教授の浮気者〜!!」

私は一気にそう言うと、走って逃げようとした。教授のバカ!
ドアの所まで走ったその時!
あれ?体が動かない……なんで?

「……今の台詞は聞き捨てならぬ…これはちゃんと話し合う必要がありそうですな」

教授ったら私の身体に後ろから手を廻すとそっと囁いてきた…その手には杖が!
ってことは私教授に魔法をかけられたってこと…?だから身体が動かないんだ…。どうしよう逃げられないよ。あんなにはっきりと教授に不満をぶちまけてしまった。
私があわあわとしていると教授は私の身体を抱え上げた。そのまま教授の部屋へ向かう……。
ってこれってば最悪のパターンではないですか。
本当にどうしよう…。


連れてこられたのは例によって教授の寝室だった。
教授ってば怒ってるみたい。私をベットに寝かすと杖を振ってきた。とたんに両腕がベットに磔にされる……なんで?もちろん身体は指一本動かせない。
これって、これって……マジでやばいのではないですか?
教授をマジで怒らせちゃったのかも?
私は緊張で動悸がしてきた。どうしたらいいの…。

「レイ……お前は、我輩の愛を疑うのかね?」

教授の目つきが、普通じゃない。

「……そんな…つもりじゃなかったけど…あんなに、ドラコやハリーばっかりに声をかけるんだもん…。今日はローラにまで……僕の事、嫌いになっちゃったのかと思…って…」

だって悲しかったんだもん、私の事、見てくれないし……。
教授がかまうのはドラコやハリー達ばっかり。それなのにハーマイオニーと話しているだけで“見せつけている”だなんて、酷いです…。私は自然と涙が出てきた。

「セブルスだって……僕の愛を、疑うの……?こんなにセブルスが、大好きなのに……」

切なくて胸が苦しい…涙が頬を伝うのがわかった。
私の気持ちが、教授に見えれば良いのに。私はいつも、あなたを想ってる……。こんなにも切ない気持ち、あなたに伝わって欲しいよ…。

ねえ、教授…この想い、あなたも感じて………。

両手は磔にされているので涙を拭うこともできない。私は涙が流れるまま、教授を見つめた。

こんなに愛しているのに、わかってくれないの…?

すると教授は苦しそうな表情をした。
どうしたの…?どうしてそんなに悲しそうなの?
そんなに悲しい顔をしないで欲しい。あなたを悲しませることは絶対にしたくないのに。
私があなたにそんな表情をさせているの?私のせいなの?
それならばいっそもう……私がそう考えた時だった。

教授が突然、私の頬を流れる涙に舌を這わせてきた。
私は驚いてしまった。教授は切なそうな顔をすると、

「…お前は、涙も甘いのだな……」

そう、言ってきたのだ。ひどく、セクシーな声だった。いつもの教授の声よりも、もっと、もっと…。
私の心は妖しく騒ぎ出した。
頬は紅潮し、恥ずかしさで教授の顔を見ることができない。教授の視線を避け、顔をそむけると睫を震わせた。緊張もあったけど恥ずかしさが強かった。
教授はクスリと笑った。

「我輩の想い人はレイ、お前だけだ……。他の輩など眼中にない。お前だけだ、お前だけが我輩の心をこんなにも狂わせるのだ………」

私の耳元で妖しくそう囁くと、そのまま耳に舌を這わせてきた。教授はソコについばむようなキスを繰り返してくる。
そんなことをされたら、私、おかしくなっちゃうよ…教授…。




「……はあん……あ…そんなに…しちゃ……だめえ……!」

「お前だけが我輩をこんなにも欲情させ、おかしくさせる……わかっているのかね?他の輩になど、こんなことをしたいとは思わぬ……こんなことをな…」

「…きゃ!……ああん……だ…め……だってば…セブ……」

「我輩のものに、何をしてもかまわぬであろう……」

「ああっ!…んんっ……だめ…だめだって……ま、だ…次の…授業があるのに…おかしくなっちゃう……よぉ…」

「……おかしくさせてやる……もっと…もっと…我輩のことしか考えられぬようにさせてやる…」

「はあっ!…んんっ……ああん……!」

「さあ……もっと乱れたまえ……もっとお前の乱れる姿が見たい………」

「…セブ…ああん…!………」




磔にされていた両手はいつの間にか自由になっていた。私は両手を教授の身体に廻すと縋りついた。右手で教授の髪を掻き乱す…ああ……凄いかも。
教授の愛撫が激しすぎて、私はもう感じることしかできない。
だから私は、思いの限りに感じ、喘ぎ、抱きしめる。

セブルス、あなたを……。


嫉妬って恋人同士を辛くさせるけど、甘くもさせるんだね……。
私達、もう二人ともおかしくなっちゃってるのかも…?
だってもうお互いのことしか、考えられないんだもの。


周りが見えなくなるくらい…教授、あなたが好きです。

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