私の恋人は薬学教授。今日も陰険に調合に夢中だ。
けど…ちょっと大丈夫?もうまるまる2日は寝ていないみたいだけど。私は一心不乱に調合をする教授を見つめた。

調合って、やってみたからわかったけど、微妙なさじ加減が難しい繊細なものだよね?
こんなに寝不足で、大丈夫なのかな……教授の身体が心配……。
私は調合して動き回る教授の背中をこっそりと追った。

何だか教授が、どっかの偉いさんから頼まれたっていうすっごい難しい薬を作っているとおじいちゃんから聞いた私は、心配で教授の様子を見に来てしまったのだ。
そうしたら部屋の中はぐちゃぐちゃ、髪を振り乱した教授がボロボロの格好で鍋を掻き混ぜていたってワケ。
もお…しょうがない人なんだから。薬学のことになると寝食を忘れてしまうんだものね?
さっきから教授ってばフラフラしてるし。
そりゃあそうだろう。2日間まったく飲まず食わずなんだもんね?そして不眠不休。
いい加減止めさせた方が良いかもしれないな。調合の山場はすぎたようだし。教授が心配な私は、声をかけた。


「セブルス…ちょっと休も?ぶっ続けで働きすぎだってば」

「……あと……薬を冷ましたら完成……だ……」

「ホント?良かった。ほら、こっちへ来て?少し休んでよ……顔色真っ青だよ?セブルス倒れちゃうよ」

「フン……これしきのことで……我輩が倒れるわけ―――」

「きゃっ!セブルス大丈夫?しっかり!!」

「ああ……すまぬ……。少し眩暈が…っ……」

「寝てないし…食べてないから…。ほら、こっちに座って?何か食べる?」

「いや……今は何もいらぬ。食べ物を見ただけで吐き気がしそうだ……」

「じゃあ……薬が冷めるまで少し休憩しよ?ほら、こっちへ来てよ……」

「んなっ!…何をするのだ!!」

「え?やってもらったことないの?これは膝枕でしょ?」

「何かは知っておる!何故……今されなくてはならないのだね?」

「だってセブルスったら疲れているみたいだから…。完徹も2日もしたら、かなり身体に負担になるよ?こうやって少し休んで…?とってもよく眠れるから……ね?」

「……いや……しかし――――」

「嫌なの……?僕の膝枕なんて……」

「嫌そういう訳ではない!………で…では……すまぬ……」

「はいは〜い♪一名様ご案内〜♪僕はあんまり肉付きが良い方ではないけど…寝心地はそれなりだと思うよ?」

「(恥)な……!なんということを言うのだ!!」

「へ……?僕、何か変なこと言った?」

「(またもやこやつは…無意識にやりおる…)……なんでもない…」

「??変なセブルス……」

「……………変で悪かったな……」

「セブルス……髪ぐちゃぐちゃだよ?僕が梳かしてあげる……ふふ…すっごい絡まってる…。もお、もうちょっと髪に気をつけないと、将来禿げるよ?」

「……余計なお世話ですな。我輩の家系には禿げはおらぬ。だから安心したまえ」

「??別に僕はセブルスが禿げちゃっても全然平気だよ?ずっと大好きだから大丈夫!セブルスこそ、安心してね…」

「(恥×10)………お前は最強だな……」

「?セブルス…耳……赤いよ…?大丈夫?」

「………はあ…大丈夫だ……(本当にこやつは天然だな…)」

「あっ!ごめんね?セブルス…。僕がこんなに声をかけまくってたら休まんないよね…これからはもうおとなしくしてるから、セブルスは休んで?」

「…うむ……そうさせてもらおう…」

「お休み……セブルス……」

「ああ……………」

「…………………」

「…………………」

「…………………」

「眠れぬ……精神が高ぶっているのであろうか……何か…話でもしてくれぬか?」

「話?………眠れない時は、お話よりも……もっといい方法があるよ?」

「いい方法…とは?」

「それはね……よく聞いていてね…セブルス……」



私は歌いだす。あなただけに、愛の歌を。
あなたにはこの言葉の意味は解からないかもね?でも、それでもいいの…。このメロディーと旋律が、きっとあなたを夢の国に誘ってくれるから。






歌い終わる頃には、教授は軽く寝息を立てて寝ていました。
ふふ……良かった、眠れることができて。
私は教授を起こさないように、教授の髪にそっと、そっと、キスを落とした。

お休みなさい、教授。ゆっくり休んでね?
膝枕って良いかも。なんだか、教授をとっても甘やかしているみたいで、うっとりしちゃうな…。
私は眠る教授を愛しげに見つめて、呟いた。

『教授……あいしてる……』

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