「のう、セブルスよ、ワシに隠していることはないかね?」


ついに来たか……。
いつかは、こう言われる日が来るのではないかと思っていたのだが、今日がこの日とは、我輩はどこまでついていないのであろう。
先ほど、あまりにもしつこいMs,グラハムを撒くのに、かなりの体力と精神力を使ったばかりなのに。それなのに神は、この狸爺とさらにやりあえと言うのか?

本来ならばすぐにでも、愛しい恋人の下へと飛んで行きたい。そして、あれは誤解だったのだと、お前だけを愛しているのだと言う事が出来たのなら……。

しかし、今はできない。とりあえず今は、この狸との話し合いをこなさなければ。
我輩は覚悟を決めると、狸爺…いや、ダンブルドア校長へと向き直った。

「我輩が、校長に隠し事をするはずがありますまい?何を、根拠のないことを……」

我輩はいつものように答えたつもりであったが、我輩を見返してきた校長は、口元が笑っていたが、目は笑っていなかった。


お…恐ろしい……。


校長は言ってきた。普通の声で、まるで世間話をするように。

「今日、おかしな事があったのじゃ。なんと、ワシの可愛い孫がな、廊下で大泣きしておったと、ミネルバから報告を受けてな……。原因は、“恋人”の浮気だと言うではないか?ワシの聞いたことは真実なのではないのかのぅ?もうそうであったら……ワシは、その“恋人”を、許すわけにわゆかぬのじゃが…」

な…っ!あの子が、泣いていた?!
やはり、あの………キスは……誤解させたらしいな。
あれはただの嫌がらせなのに…。我輩はあんな奴のことはなんとも思っておらぬのに、我輩が愛しているのはこの世でただ一人であるのに。我輩の胸は、切なく震えた。

恋人に、完全に誤解させてしまった……。
我輩は、すぐにでも飛んで行きたい気持ちを抑えると、校長へと言った。

「それは誤解でしょうな。“恋人”は何があっても裏切らぬ、生涯でただ一人、その者だけを愛していると誓ったはずですぞ。そのような裏切りを、するはずがないでしょう!」

「そうかのぉ?何やら、その浮気相手とかなり親しげであったようじゃぞ?肩など組んで…それは親しそうにしておったと、聞いたのだが?」

校長の眼鏡がキラリと光った。
失礼な!!我輩があんな輩と、親しげにするはずがないであろうに。ヘザーのあの、しつこいくらいの嫌がらせは、校長、あなたもご存知のはずでしょう!!
いやしかし、それを言っては……ならんな…。
我輩が、“恋人”であることがばれてしまう。いやもうばれているのであろうが、堂々とここで言っても良いものなのか?!

もしそのようなことを言ったら、我輩の命はないのやも知れぬ。
我輩は溜め息をつくと、言った。

「“恋人”にとって、あの子は特別な子です。今まで生きてきた中で、一番の幸せをくれた……。これから何があっても、どんな障害があったとしても、あの子を生涯愛し、慈しみ、守ると決めたのだ。半端な気持ちで好きになるはずがない!よって浮気など、するはずがないのです。あのような嫌がらせをする輩など、つけ入る隙もない……“恋人”の心は、ただ一人にしか向いておらぬのだから……」

我輩の言葉に、校長は笑ってきおった。そこは笑う所ではないぞ!狸爺め!!

「まったく……“嫌がらせ”、とな?鈍さもここに極まれリ、じゃな……」

「?何と言いました?校長……よく聞こえないのですが……」

「よい……独り言じゃ……。その“恋人”とやらは、知っておるのかのぉ?信頼というものは、崩れやすいことを……恋というものには、不安が付きまとうことを……。ましてやあの子はまだ子供……“恋人”に遠慮しておるのではないのかのぉ…?」

その言葉を聞いた我輩は、固まってしまった。


確かに……最近は、新しい薬などを研究して、すれ違いの日が多かったかも知れぬ。それに……ルーピンの奴に、誠に不本意ながら、薬を作っていたから、我輩は忙しかった……。あの子とゆっくりと話をする時間が、少なかったのは事実だ。

だからあの子は、誤解したというのか?我輩を信じることができなかったというのか……?
考え込む我輩に、校長は軽く溜め息をつくと言ってきた。

「セブルスよ……障害が大きければ、恋は燃えるがの……その分いつもお互いを想い合い、相手を大切にする気持ちがなければ、こういった簡単な波に、さらわれてしまうのじゃぞ?
ワシの若い頃などはな――――」



は…始まった……。


ダンブルドアの必殺技………“昔話”!!


これが始まったら、誰も止められぬのだ……。
我輩がすぐにでも恋人の所へ行きたいと思っておるのをわかっているであろうに……この狸爺め!!
こうなってもう、誰も止めることは出来ぬ。この“昔話”が終わるのを、ただじっと、待つしかないのである。



この大事な時に、我輩の愛しい恋人に、ふくろう一羽飛ばすことが出来ぬ。せめて手紙でも良いから、あれは誤解だと、伝えたいのに……。


我輩は溜め息をついた。
すまぬ……もう少し、待っていてくれ……。我輩は心で恋人に詫びたのであった―――。

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