欲望というものは、おさまるものではないらしい。そう思える相手は、レイ、お前だけなのだろうか…。
高ぶる欲望のまま、お前を抱いた。
誰も触れたことのない場所を暴き、その肉を貪るように責める。
我慢出来ない。この行為が、非道徳的であったとしても、止めることができぬ。
そうしなければ、我輩は狂ってしまっていただろうと思えるほど、お前を愛した。
渇望―――それほどまでに、狂おしいほどまでに求める。身体が、そしてこの心が。
いまだかつて、そこまで想った相手はいなかった。あのリリーにでさえ………。
何故なのだろう。時に、愛しすぎて壊してしまいたくなる。
大事にしたい、慈しみ、大切にしたいと思うその感情とうらはらに、我輩の心に巣食う黒い感情…。
だが、相反するこの気持ちは、確かに我輩の中にあった。
そんなに可愛く喘ぐからだ。
震えるほど感じるからだ。
まるで誘うようにすがりついてくるからだ。
だから、もっとお前を狂わせたくなる。快楽の、その先へ――――。
リリーへの想いは嘘ではない。彼女のことは本気で愛していた。いや、愛している。今も、そしてこれからも。
だから我輩はこうして………。
…………………。
彼女への想いが綺麗なままであるのは、その恋心が成就されなかったからなのか。
それとも、彼女とはキス一つ、したことすらなかったからなのか。
肉欲に満ちた、今のお前との関係とのあまりの違いに、我輩は戸惑う。
たとえいくら身体を重ねても、満足することがない。一度果てても、何度でもしたくなる。
快感の連鎖は麻薬にも似て、我輩の心を、身体を蝕む。
汗と精にまみれ、獣のようになっても、なお、レイを求めるこの心は……それも愛なのだろうか。
綺麗とは言えない欲に満ちたこの感情も、お前を壊したいと思うこの凶暴な気持ちも。
目が覚めたら、我輩はきっと、またレイを責めるように愛してしまうだろう。
泣いて懇願しても、果てるまでお前を揺らし続けるだろう。何度も、何度でも。
もしや我輩は、恋人との性交という行為で、生を実感したいのだろうか。
わからない。自分の感情なのに、最近、レイに対するこの気持ちを整理することが難しくなってきた。
いい年をした男が…情けないな。我輩は苦笑した。
眠るお前の頬に触れながら、そんなことを思う、ある情事の夜―――。
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