「ねぇ、セブルス……見て?」
「なんだ?」
「ほら……可愛い。こんなに可愛らしい花を咲かせるのね…」
「そうだな……」
僕らは今、薬草を探しに来ている所だ。
薬草学の宿題で、レポートを書かなければならないので、一緒に珍しい薬草を探しに来たのだが……なかなか見つからない。
「これじゃあ駄目かしら?」
僕は、本を見ながら確認する。
「それは駄目だ。この状態では効果がないらしい。花が落ちた後でないと…」
「そう……」
シュンとする君。君のどんな顔も、僕は好きだ。
でも、悲しい顔は好きじゃない。君には笑っていて欲しいんだ。
だから、僕は本をめくった。確かこの辺にあの薬草が載っていたはず…。本当は僕が宿題に使おうと思っていたのだが、愛する君のために……。
「これはどうだ?確か…あっちの草むらにあったような気がする……」
「探してみるわ!」
そう言って君は、草むらへと駆けていった。しばらくすると嬉しそうな叫び声。
「あったわセブルス!」
「よかったな…」
僕に、得意げに、採ったばかりの薬草を見せて君が笑う。その微笑みと緑色の瞳……。キラキラと輝いていて、どんな宝石よりも綺麗だ……。
リリー……僕だけの宝石―――。
*****
「ねぇ、セブルス……見て?」
「なんだ?」
「ほら……可愛い。こんなに可愛らしい花を咲かせるんだね…」
「そうだな……」
レイが思いがけず言ってきたその言葉に、我輩は驚いた。リリーと同じ台詞。同じ薬草の花を見て、お前が笑いかけてくる。
我輩の胸は切なさでときめく。ああ……この感情をどうしたら良いのだろう……。
「セブルス?どうかしたの…?」
レイのその言葉に、我輩は呟くように答えた。
「何でもない……何でも…………。こちらの薬草はどうかね?」
昔、痛い恋をした。
あの、緑色の瞳はもう二度と、我輩を見つめ返してくれることはない。
守れなかった我輩の想い人は、今の我輩を見て、どう思うであろうか………。
あのような辛い目には二度と遭いたくない。今度同じ目に遭ったら、生きては行けぬ。
だから、今度こそ守り抜くと誓おう。お前のその、黒曜石のような瞳に―――。
我輩は衝動的に、レイの手を掴み、その甲にそっと、キスを落とす。
「え?セブ……え?……どしたの…?」
慌てるレイが酷く愛しい。
我輩は言った。
「レイが愛しくて……我慢できなかっただけだ」
お前は知らぬのだろうな。だが、それで良い。
手の甲にするキスは、忠誠の証し。我輩の生涯をかけ、愛し、慈しみ、守ると誓おう。
「う……セブのイケメン!恥ずかしいでしょ〜!」
「おや、恥ずかしかったのかね?我輩の恋人は、随分と恥ずかしがり屋なようだ」
「もぉ、そーいうキザなことしないのッ!」
「クク……顔が真っ赤ですぞ?」
顔を真っ赤にさせ、恥らうレイを見て、我輩はさらに愛しさを募らせる。
レイ、お前がいるだけ。
ただそれだけで、こんなにも我輩の心は満たされる。幸せに溢れる。
寄り添い、微笑みあい……いつまでもレイと愛を確かめ合いたい。
ずっとずっと愛している…我輩の恋人よ―――。
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