▽ とりっくおあとりーと?
※2012ハロウィン企画フリー夢(フリー配布終了)
「トリックオアトリート!」
「もぉ!しょうがないわね〜……」
「へっへ〜ん!リリーのお菓子、ゲットだぜ!」
「ジェームズ……お前、馬鹿か…?」
「親友に向かって何だよその口の聞き方……」
「はぁ〜……もう、いい……」
シリウスが頭を振って駄目だこりゃって顔をしてるみたい。
そう、今日はハロウィーン。みんな、好きなように仮装をして、“お菓子くれなくちゃ、いたずらしちゃうぞ!”をやっている。
ここは、グリフィンドールの談話室。先程の会話は、言わずもがなだけど、ジェームズとリリー、そしてシリウスの会話。
シリウスは呆れ顔みたい。何でだろう?お菓子、貰えたから良かったじゃん。
不思議そうな顔をしていたら、キャサリンに呆れた、って顔をされた。
「ちょっと……レイったら、解らない訳?」
私は素直に頷いた。
「うん、わかんない……」
「嘘でしょ……あなた、あのジェームズと次元が同じだなんて……」
「?どういう意味?」
「はぁ〜………もう、いいわ…。もういいから、早くあなたも恋人の所へ行きなさいな。此処は適当に誤魔化しておくから。ね?」
キャサリンは気を使ってそう言ってくれた。
そう、私がスネイプ君とお付き合いしているということは、すぐに皆にばれてしまった。
当然ながら、このいたずら4人組は気に入らない訳で、私が彼の元へと行こうとすると、必ず阻止しようとするのだ。
彼らとはそんなに仲が良かったわけでは無いのだけれど…。
ジェームズからはこう言われた。
「アイツの陰険がうつるから止めといた方が良いって!」
シリウスからはこう。
「レイ、きっとお前勉強しすぎて頭がおかしくなってるだけだと思うぜ。よーく考えてみろ、あのスニベルスなんだぞ?スリザリンだぜ?」
ルーピンからはさらに酷い。
「君の趣味がアレとはね…。いやはや、驚いたよ。好き好きあるけどねぇ…」
はっきり言って、余計なお世話だと思うんですけど。
彼ってとっても素敵なんだから。澄んだ黒い瞳と、サラサラと流れるような黒髪。真剣に勉強をする姿はとっても格好良いし。
なによりもさりげなく優しい。女の子としてこれはポイント高いと思うんだけど。
私がそう言って反論すると、4人組の顔がだらんとしだした。そしてちょっと顔が赤くなっているような気がするのだけど…?
シリウスがボソリと呟いた。
「これは……重症だな…」
ホント、失礼しちゃう!!
私はプリプリしながら、外へと出た。外は夕暮れ時。景色が綺麗だった。
私は落ち葉を踏みながら、あの場所へと向かう。そう、私達の思い出の場所へ。
私と彼とは、よくあの場所で一緒に過ごすから。今日もその予定で待ち合わせをしているのだった。
「今日は遅かったな…レイ…」
湖のほとりには、スネイプ君がいた。本を片手に開きながら、私を見つめてくる。
それが、なんだか絵になるっていうか……やっぱり格好良いよね。
私は微笑みながら返事をする。
「待たせてごめんね?…セ…セブルス……」
「いや、そんなに待ってない…」
スネイプ君はそう言うと、本を閉じた。
その時、私は急に思い出した。さっき、ジェームズがリリーにしていたことを。
私達だってやっても良いよね?スネイプ君怒らないかな……。
ちょっと心配になったけれど、私は誘惑には勝てなかった。スネイプ君が持っているであろうお菓子に、気持ちが傾いていたのが大きい。だって私は食いしん坊なんだもの。
「セブルス……あのね?」
「なんだ?」
「あの…あのね……“トリックオアトリート?”」
「………………何故疑問系なんだ?」
「あ……なんとなく……」
「………………」
無言になってしまうスネイプ君。ひょっとして怒らせた?
しばらく緊迫した沈黙があたりを支配した。と、突然、スネイプ君が笑ってきたではないですか。
なんかとっても、意地悪そうなんですけど。企んでます、みたいな。
?
訳がわかっていない私に、スネイプ君はポケットを探り私に何かをくれた。
「ほら……貴重な飴玉だぞ?とっても美味しいヤツだ。レイ…これをやるのはお前にだけだからな…」
「ホント?嬉しいっ!!」
“お前にだけ”、この台詞に感激してしまった。スネイプ君から美味しそうなオレンジ色をしたキャンディを貰った。
さっそく食べようっと!
包装を外して口に含む。あ、ホントだ美味しい!オレンジの味だ。
モグモグと口を動かしながら、私はスネイプ君にお礼を言った。
「あ…ムグ…ありがと……モグ…セブルス……」
「しゃべるか食べるかどっちかにしろ……」
えへへ…ごめんなさい。
しばらくモグモグしていたら、スネイプ君はすっごい意地悪な顔で言ってきた。
「トリックオアトリック………」
「ムグッ!……それ…間違いでしょ?」
それを言うならトリックオアトリートでしょうに…。
違うよって言っているのに、スネイプ君はニヤリと笑うと囁くように言ってきた。
「僕は菓子などいらない。僕が欲しいのは―――」
スネイプ君はそう言うと、突然私へと距離を詰め、そして―――
「んんっ………!!!」
スネイプ君が私を抱きしめてキスしてきた。
突然のことに私は驚いてしまうばかりで抵抗なんてできやしない。スネイプ君はそんな私を嬉しそうに見つめて、キスを深くしてくる。
舌を絡ませて………少し、強引に私の口内を刺激して、そして………。
「んっ…………はぁっ………突然酷いよ!スネイプ君ってば……」
私の口の中にあった飴玉はスネイプ君の口の中に移動してしまった。
スネイプ君は意地悪に笑っている。
「甘いな……この飴玉…。こういう食べ方も、刺激的だな?レイ……」
私はスネイプ君のその台詞に、何も言い返せない。恥ずかしくてどうしようもなくて、ただ、顔を真っ赤にするだけだ。
すると彼はそんな私を追い詰めるように、言ってきたのだった。
「今、僕のことを何て呼んだんだ?レイ………」
げ、まずいかも。私は後ずさる。
「何て呼んだんでしょーか?お、憶えてないですっ!」
スネイプ君が不敵に笑いながら近づく。
「君は、忘れやすいのか?それとも……僕を、誘ってるのか?」
「そそそ、そんな訳ないですぅ〜!」
必死で逃げようとするんだけど、後ろに堅い感触があると思ったら、並木だった。
スネイプ君は両手を使って、私の身体を挟んでしまう。そうして甘く囁いてきた。
「まぁ、どちらでも良い。僕はこうするだけだ……」
「ちょっと待って―――」
「待たない」
そう言ってスネイプ君は私を抱きしめると、またキスをしてきたのだった。
ちなみに、このキスは飴玉がなくなるまで続いた。
ぐったりする私を抱きしめてスネイプ君は嬉しそう。そしてスネイプ君はポツリとこう言ってきたのだった。
「レイのおかげで、ハロウィーンが好きになりそうだ…」
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