やっと目標額に達したので、バイトを辞めた。
日本のアルバイトとは違うから、こっちの賃金って週払いなのよね。
それだけ、階級差別があるってことなのかもしれない。
お財布に入った現金を見ながら、私はにんまりとしてしまう。
だって、もう買う物は決めてあるんだもの!
あれって絶対、甘いモノに目がない彼が、とっても喜びそうなプレゼントよね!私もしてみたことがないから、実は楽しみだし。
心はうきうき、スキップなんかしちゃって。
鼻歌なんか歌いながら、私はデパートに直行したのだった。
お目当ての商品をゲットしたら、次はマーケットへ直行。
フルーツを沢山買うためだ。
フルーツコーナーには、おいしそうな果物がずらりと並んでいる。
苺は外せないアイテムよね。あとは……リンゴとかもいいかも!
洋梨も意外といけるかもしれない。買っておこうっと。
それからお菓子コーナーに行って、板チョコを大量に購入する。
それから、マシュマロも。
だいたい、こんなとこかしらね?
帰りにスパークリングワインも買う。ロゼにしよう。
予算的に、高いワインは買えないの。その分、アランをめいいっぱい甘やかしちゃうんだから、勘弁してね?
速攻で自宅に帰ったら、セッティングをすることにする。
本当は、今日はまだバレンタインデーではないけど、肝心のバレンタインの日は、彼に仕事が入っているのだ。
朗読会とかって言ってたわ。
アランの声って素敵だものね。シェイクスピアの詩の朗読会らしいけど……いいなぁ。
本当は、私だって聴きたい。
彼の甘い声で、素敵な、うっとりするような詩を朗読してほしい。
中世の貴婦人になったみたいな、そんな気分にして欲しいけれど………私がアランの朗読会に出席なんかしようものなら、大騒動になってしまうだろう。
パパラッチが煩そうだし。
何よりも、結婚したことを大々的に知らせていないから、大騒ぎになってしまうかも。
彼にそんな迷惑はかけられないものね…。そんなことを思いながら準備をしていたら。
ガチャガチャ、と鍵を開ける音が。そうして、扉が開く音と共に、彼が帰ってきたのだった。
「アイネ…『タダイマ』」
まずいわ!私はダッシュでアランに駆け寄ると、彼に抱きついた。
「お帰りなさい!アラン……」
そう言って、キスをする。アランの思考を逸らそうと頑張ってみるんだけど……駄目、かも。
私に深いキスを仕掛け、私がメロメロになったのを微笑んで見つめるアラン。おや、という顔をしてしまった。
ああ、鼻、ヒクヒクさせてるし。
あなたったら、鼻も高いけど嗅覚も鋭いんだから。
「なにやら……良い匂いがするけど……」
んもぅ!隠してもバレちゃうのね……しょうがない。
「アランにサプライズよ!」
「私に…?」
「うん、そう!それでね?ダイニングテーブルに着くまで秘密にしていたいから、目をつぶっていて欲しいの…」
「どうやら、素敵なサプライズのようだね。わかった、じゃあ、アイネがそこまで、私をエスコートして……」
「らじゃー!」
微笑んで目を閉じてくれた彼の手を引きながら、テーブルへと案内する。
席に座ってもらってから、私はそおっと囁いた。ああ、胸がドキドキする。
「目を開けて?アラン……」
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