頑張ってバイトを見つけた。
アランには絶対にばれたくない。だって、彼に隠れてこっそりバイトをしているなんて知られたら、きっと彼、怒っちゃうわ。
結婚する時にした約束、破っちゃってるから…。
そう、結婚する時にアランとした約束があるの。
「アイネ…私に、隠し事は無しだよ?勿論私も、隠し事はしないから。だから、不安に思ったことは、お互いにちゃんと確認していこう」
私をぎゅっと抱きしめて、甘く囁いてくれた彼。私はとってもうっとりしちゃって、そして嬉しくてしょうがなかった。
ああ、私、やっぱりあなたにぞっこんみたい……。
私はアランの胸に頬を寄せて囁き返した。
「約束するわ……」
「もしも…約束を破ったら…」
「破ったら…?」
「フフ……キス100回の刑だ」
「それじゃあ刑にならないわ、アラン…」
「ただのキスだと思われたら困る…この刑は普通のキスじゃない。覚悟をしておいてもらおう……」
「やだ…アランったら……」
っていう素敵な約束をしたのだけど。
でもそれって、完全犯罪、じゃないけど全て終わらせてしまえば、そしてばれなければきっと大丈夫よね?
なによりも世界で一番愛している夫の誕生日プレゼントとバレンタインデーのプレゼントを買うためだもの!
そんじょそこらのファンには負けたくないの!
だって、アランのことを一番愛しているのは私だもの。
あんな、リップ付きの手紙になんか負けないッ!
写真にだって負けないッ!
アランの喜ぶ顔を見るために、今は稼ぐのみっ!!
そう気合いを入れると、私は愛想笑いを一つ。そして声を張り上げた。
「いらっしゃいませ〜!」
って頑張ってはいるんだけど。
ウェイトレスって大変な仕事なのね。ずうっと立ちっぱなしだから、足が棒みたい。
どうしてランチって内容が毎日変わるの?!憶えられないよぉ〜。
お客さんにお尻を触られた!!泣きたい……。
って感じで毎日大変で。
仕事が終わる頃には、私は毎日ヘロヘロになっていた。
ヨレヨレになって自宅に帰り、ソファーでバタンキュー。
アランの仕事が忙しくて良かった。こんなことしてたら、絶対に何しているんだって問い詰められるでしょうからね。足だの腰だのに湿布を貼りながら、私は溜め息を一つ。
お金を稼ぐって大変なことなんだわ…。私、バイトとか今までしたことほとんどなかったから、無謀すぎたかも。
でも、外国人だったらあんまり良いバイトなくって…時間もないし、仕事内容を選り好みはできなかったのだ。
まだ、夜の仕事じゃないだけマシでしょ。パブでの給仕、っていう仕事もあったのだ、実際。
やっぱり夜の仕事はお給料が格段に良い。
良いけど、危険も大きいし、夜の仕事はさすがにマズイだろうってことは私だって解るもの。
もしも夜のお仕事をしたことがアランにばれたら……ものすご〜く怒りそう。
彼って本気で怒ったら怖いんだから。まだ1回しか喧嘩したことないけど。
あともう少し働けば、目標額になるはず。そうなったらバイトを止めて、プレゼントを買わなきゃ!
「アイネ、1番テーブルにランチをお届けして!」
「は〜い!」
いけない、今、仕事中だったんだわ。
私は短いスカートを気にしつつ、トレイにランチをのせ、運ぶことにしたのだった。
……このスカート、短すぎて嫌…。
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