短編 | ナノ


▼ スネイプ教授の受難 前編



そろそろクリスマスじゃな!ワシの一番大好きな季節がやってきたわい。今年は可愛い孫ができたことじゃし、何かびっくりするようなサプライズを用意して、あの子を喜ばせたいのぉ。

今時の子供は、いったいどんなものが好きなのじゃろうか。
お菓子はいつの時代も、子供達の心をわしづかみにする魅力をもっておる。かくいうワシも甘い物には目がないたちじゃが、それではつまらないの〜。せめて、あの子がどんなものを好きなのか、好みが分かればよいのじゃが。

「おお、そうじゃった。ミネルバは孫がおるから、まずはミネルバに一般的な子供の好きなものなどを“りさーち”してみることにするかの」

そうそう、それがよいの。
ワシはフォークスに同意を求めると(フォークスは羽を光らせてくれていたので、同意してくれたのじゃろう)ふくろうを呼び寄せ、ミネルバ宛に手紙を書いた。
午後のお茶に誘いがてら、話を聞いてみることにしようぞ。




ミネルバは快く午後のお茶に来てくれた。丁度、マダムポンプリーも時間ができたということでお茶に来てくれたので、楽しいひと時を過ごせそうじゃの。ポピーにも孫がおるからのぉ。
本日のお茶菓子はマドレーヌじゃ。もちろんレモン味じゃ。ワシは今レモン味のお菓子に凝っておるのじゃ。

「アルバス、急にわたくしをお茶に誘うなど、どうしたのですか?…何か心配ごとでも?」

ミネルバが心配そうに尋ねてきおった。昔から心配性じゃの。きっとハリーのことで何か問題でも起こったのかと心配しておるのじゃろう。
ワシはホッホッホ〜と笑い、

「そのように深刻な顔をしないでおくれ、ミネルバよ。ハリーのことではないぞ。…あの子は大丈夫じゃ」

今のところな。
するとミネルバは訝しげな表情をしておった。

「実はじゃな、今回は何と言うか、私的なことでミネルバ、できればポピーにも相談に乗って欲しいと思ってな。困っておることがあるのじゃ」

とワシが言うと二人とも何だろうという顔をしておった。相談など、ワシは普段あまりせんからの。じゃが、この道の大先輩である二人に相談することはとても理に適っておるからの〜。

「相談というのはの…今年突然、禁断の森に現れたレイのことについてなんじゃ。事情があってワシの孫としてここホグワーツに通っておるが、実はの、あの子には此処に来る前の記憶がないんじゃ」

とワシが言うと、二人ともとても驚いておった。
このことは他の教授陣には言っておらんからの。ポピーなぞもう涙ぐんでおる。

「ワシも孫を持つのは初めてじゃ。もうすぐクリスマスじゃし、何かびっくりするようなプレゼントを用意してあの子を喜ばせてやりたいんじゃ。祖父として楽しい思い出をつくってやりたくての。
二人とも孫がおるし、最近の子供の好きなものなどはよく知っておるじゃろうて。何が良い物がないかの?レイを喜ばせそうなプレゼントは。ワシに教えてくれんかの」

ワシがマドレーヌを勧めながら話をすると、二人とも何度もうなづいておった。わかってくれたかの。

「あの年頃の子供達といえば…わたくしの孫などはやはりクィデッチですわね。あれに夢中にならない子供はおりませんでしょう。ニンバスシリーズの箒など、よくねだっておりました。」

ミネルバがそう言った。
う〜むどうじゃろう。クィデッチが好きなどと、レイから聞いたことがないの。
ワシがそう答えるとミネルバは驚いておった。彼女もクィデッチが好きじゃからの。

「わたくしの孫などは、ペットをそりゃあ欲しがりましてね…丁度流行っておりましたから、子犬を買ってあげたことがございましたね」

ポピーがそう言った。
どうじゃろうか。あの子は学校の入学準備の時も、自分のペットを買ってこなかったからの。あの子はあまり動物が好きではないのかも知れん。
ポピーにそう答えると彼女はまあ、という顔をしておった。う〜む難しいのぉ。
孫を一人喜ばせるという事は、中々難題じゃの!これなら、魔法省の役人を丸め込む方が何倍も楽じゃ。
やはり、無難な所でお菓子詰め合わせかの〜と考えていたときだった、ポピーが話したのは。

「そうですわ、セブルス!」

ポピーが叫んだ。

「セブルスが、どうしたのです?」

ミネルバは不思議そうな顔をしておった。
…セブルスか!そうか、そうじゃな!ワシもうっかりしておったわい。そういえばクリスマスを一緒に祝ってもらおうかの〜と考えたこともあったの。忘れておった。

「そうですわよ、アルバス!あの子はとってもセブルスに懐いております!クリスマスを一緒に祝ってもらえば宜しいのです!」

ポピーが興奮しておるぞ。

「何を言うのです!セブルスはスリザリンの寮監でしょう?グリフィンドールの生徒のクリスマスを一緒に祝うなど、するはずがないでしょうに」

ミネルバは鼻にしわを寄せておる。

「ミネルバは知らないのです!この間なんてこんなことがありましたのよ…」

ポピーは目を輝かせながら“この間のこと”について話し始めた……。




全てを話し終わった時、紅茶は冷めかかっておった。ポピーよ、力説じゃったのぉ。
ミネルバは話しを聞いて顔を少し赤くしておった。

「まあ、セブルスがそんな事を…?」

ミネルバが信じられない、という目をしておる。
ワシもポピーの話を聞いて驚いておる。まさか、セブルスが一人の子供にそこまで心を許すなど…驚きじゃのぉ。
その話を聞いたからには、クリスマスの計画はセブルスメインに決定じゃな。
あとはどのように進めていくかじゃ。


ワシら三人はそれから具体的に話し合いを進めていったのじゃ。




*****




もうすぐクリスマスの季節がやってくる。

世の人々は浮かれておるだろうが、我輩にとってはどうでも良いことであった、去年までは、だ。今年はどうするべきか…。そう、レイのことだ。
あやつには家族がおらぬ。おらぬというか記憶がないので正確に言うとわからぬのだ。クリスマス休暇も、ここホグワーツで過ごすと魔法薬学の授業中に話していた。

まだ12歳の子供だ。この間も夜中に屋上で泣いておったな。親の事などを考えて泣いていたのかもしれぬ。淋しいのだろうか。理由を特に聞き出したわけではないから、本当のことはわからぬが。

プレゼントくらいは渡してもおかしくはないだろう。

あのくらいの子供の欲しがるものが何なのか、我輩には皆目検討もつかぬが。
我輩の時は実験道具や魔法書などが欲しかったが、我輩とは違うのだ。同じものを送るべきではなかろう。さて、何を送るべきか…我輩は考えることにした。


1日かかって、やっとプレゼントを決め(贈り物でこんなに悩んだのは初めてかもしれぬ)、ふくろう通販で注文した時にはとっぷり日も暮れていた。我輩はため息をついた…疲れた。

その時、一羽のふくろうが飛んできた。あれはダンブルドア校長のふくろうだな。何かあったのだろうか。
ふくろうから手紙を受け取る。我輩は手紙を読んで驚愕した………何だこれは!!!

我輩は直ちに校長室へと抗議に向かった。あの狸爺、我輩の都合は聞く耳なしか!




To,セブルスへ



クリスマスの日、ワシの可愛い孫、レイへのプレゼントとして、音楽会へ招待することになった。ワシも一緒に行こうと考えておるのじゃが、セブルスも是非出席してくれんかの。もちろんチケット代はワシが払うぞい。
クリスマス当日、20時に校長室へ来ておくれ。


P,S
 もちろん校長命令じゃ。拒否権はなしじゃぞ♪


From,ダンブルドアより



その後猛然と抗議に向かったセブルス・スネイプ教授は、ダンブルドア校長にうま〜く丸め込まれ、一緒に音楽会へ向かうことになってしまうのでした。


*……後編へ続く。

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